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MASH(脂肪肝炎)の治し方は?食事・運動から最新の治療薬まで徹底解説

この記事でわかること
  1. 肥満症とMASLDが密接に関わる真の理由
  2. MASLDが全身の病気を進行させる深刻な仕組み
  3. 肝線維化を防ぎMASLDを改善する生活習慣の具体策

「健康診断で脂肪肝と指摘されたけれど、お酒を飲まないから大丈夫だろう」と放置していませんか?かつて「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれていた病気は、現在「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」という名称に変わり、その危険性が再認識されています。

MASHは、放置すると肝硬変や肝がんへと進行するだけでなく、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクも高める恐れがある病気です。本記事では、MASHの正体から原因、最新の診断・治療法にいたるまで、エビデンスに基づき詳しく解説します。

1. MASH(マッシュ)の定義と背景:なぜ名称が変わったのか

近年、肝臓病学の世界では大きな変革がありました。これまで「アルコールを飲まない人の脂肪肝」を一括りにしていた名称(NAFLD、ナッフルディー)が、より病態を正確に反映した「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD、マッスルディー)」という言葉に置き換わったのです。NAFLDのうち、一部の症例では肝臓の炎症や線維化が起こるため、病変が進行しやすく、NASHと呼んで要注意対象疾患とされていたわけですが、NAFLDがMASLDに変更されたことにともない、NASHもMASHに変更されています。

1-1. NAFLD/NASHからMASLD/MASHへの名称変更の経緯

2023年、欧州肝臓学会(EASL)やアメリカ肝臓学会(AASLD)を含む国際的な主要学会の合意により、新しい命名法が採用されました。

  • 旧名称:NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) / NASH(非アルコール性脂肪肝炎)
  • 新名称:MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患) / MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)

この変更の最大の理由は、従来の「非アルコール性(Non-Alcoholic)」という病名が「お酒を飲まないこと」という除外診断に基づいていたためです。新名称の「代謝機能障害関連(Metabolic Dysfunction Associated)」は、肥満、高血糖、脂質異常といった「代謝の異常」が病気の中心にあることを明確に示しています。また、「Fatty」という単語は、脂っこいという意味以外に、デブ・太っちょといった微妙なニュアンスを含んでいることより、fatty liverの代わりにsteatotic liverを用いることで、患者への偏見(スティグマ)を軽減する目的も含まれています。

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1-2. MASHへの進行プロセス

肝臓に脂肪が蓄積する病態(MASLD)は、大きく分けて以下の2つの段階があります。

  1. MASL:肝臓の細胞に余分な脂肪がたまっている状態。この段階ではまだ炎症や細胞の破壊は目立ちませんが、放置すると進行の土台となります。
  2. MASH:蓄積した脂肪が原因で肝細胞に炎症が起き、細胞が壊死している状態です。さらに進行すると、肝臓が硬くなる「線維化」が始まります。

患者さん全員がMASLからMASHへと進行するわけではありませんが、これを食い止めることは医療上の最優先課題となっています。

NAFLD/NASHからMASLD/MASHへの名称変更の経緯
Geniniで生成した画像をもとに作成

2. MASHの発症原因とリスク要因

MASHの発症には、単なる食べ過ぎだけでなく、体内での複雑な代謝機能の異常が関わっています。

2-1. 代謝機能障害(メタボリックシンドローム)との深い関わり

MASHは「肝臓におけるメタボリックシンドロームの発現」とも言われます。以下の5つの因子のうち1つ以上を伴う脂肪肝がMASLD/MASHと定義されます。

  • 肥満
  • 高血糖
  • 高血圧
  • 高トリグリセリド(中性脂肪)血症
  • HDLコレステロール血症

特に「2型糖尿病」を合併している場合、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで、肝臓への脂肪蓄積と炎症が加速し、MASHから肝硬変へと進むスピードが非常に速まることがわかっています。

2-2. 痩せ型でも安心できない、「非肥満型MASH」に要注意

日本人に特に注意が必要なのが、「痩せ型(Lean)」の脂肪肝です。 見た目は太っていなくても、内臓脂肪が多い「隠れ肥満」の人や、肝臓の代謝に関わる遺伝的な素因(PNPLA3遺伝子変異など)を持っている人は、少量の体重増加や食生活の乱れでMASHを発症します。 「自分は痩せているから肝臓は大丈夫」という思い込みは、発見を遅らせる要因となりえます。

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3. MASHの症状と進行リスク:なぜ「沈黙の病気」なのか

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、ダメージを受けてもなかなか悲鳴を上げません。MASHも同様で、かなり進行するまで自覚症状がほとんど現れません。

3-1. 自覚症状の乏しさとかすかなサイン

MASHが進行しても、痛みを感じることはまれです。しかし、一部の患者さんでは、病状が進むにつれて以下のような漠然とした不調が現れることがあります。

  • 全身の倦怠感:なんとなく体がだるい、寝ても疲れが取れない。
  • 右脇腹の違和感:肝臓が肥大し、周囲を圧迫することによる鈍い違和感。

これらの症状が出る頃には、すでに肝臓の線維化が進行している可能性があります。血液検査での「数値の異常」を軽視せず、早期発見の重要なシグナルとして捉える必要があります。

3-2. 放置による合併症:肝硬変から肝がん、そして全身疾患へ

MASHの本当の怖さは、肝臓を破壊するだけでなく、全身の血管や臓器にも悪影響を及ぼす点にあります。

  1. 肝臓の末期症状:持続的な炎症により肝臓に傷跡(線維化)が増え、肝臓が機能しなくなる「肝硬変」へ至ります。また、肝硬変にならなくてもMASHの状態から直接「肝がん」が発生することもあります。
  2. 心血管系への影響:MASH患者さんの死因で最も多いのは、実は肝不全ではなく「心筋梗塞」や「脳卒中」です。肝臓や内蔵脂肪の炎症が全身に波及し、動脈硬化を加速させると考えられています。
  3. 慢性腎臓病(CKD):代謝異常は腎臓にも大きな負担をかけ、慢性腎臓病(CKD)の発症リスクを高めます。悪化すれば将来的に人工透析が必要になる恐れもあるため注意が必要です。
初期症状 右脇腹違和感、倦怠感 心脳疾患リスク、肝硬変・肝がんリスク、腎臓病リスク
Geniniで生成した画像をもとに作成

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4. MASHを早期発見するための診断と検査の重要性

MASHの診断には、血液検査、画像診断、そして必要に応じた組織検査を組み合わせて行います。

4-1. 健康診断で見極めるべき血液検査項目

まずは一般的な血液検査の項目を確認しましょう。

  • ALT(GPT):肝細胞が壊れると血液中に漏れ出す酵素です。ALTが30IU/Lを超えると脂肪肝の疑いが出てきます。
  • AST(GOT):ALTとともに上昇しますが、ASTがALTを上回るようになると、「線維化」が始まっているサインとされます。
  • γ-GTP:アルコールだけでなく、脂肪の蓄積によっても上昇します。

また、近年では「FIB-4 index(フィブ・フォー・インデックス)」という指標が世界的に重要視されています。肝臓の線維化(硬さ)がどれくらい進んでいるかを、血液検査と年齢から簡便に予測する指標で、この数値が高ければ、専門医で後述するような精密検査が勧められます。

4-2. 痛くない最新の画像診断

MASHの確定診断には、肝臓に針を刺す「肝生検」が必要になります。しかし、いきなり全員に行うわけではなく、まずは負担の少ない検査で評価するのが一般的になっています。

  • 腹部超音波(エコー)検査:最も一般的な検査で、肝臓が白く写る「ブライトリバー」の状態を確認します。
  • フィブロスキャン(FibroScan):超音波を使って「肝臓の硬さ」と「脂肪の量」を瞬時に数値化できる装置です。痛みはなく、数分で終わるため、定期的な経過観察に適しています。

4-3. 確定診断としての肝生検

画像診断で高度な線維化が疑われる場合や、他の肝疾患との鑑別が必要な場合には、入院して肝臓の組織を一部採取する「肝生検」が行われます。これにより、炎症の強さや線維化のステージ(進行度)を確定させます。

5. MASHを克服するための治療法と生活習慣の改善

MASHには、今のところ「これを飲めば完全に治る」という特効薬は存在しません。しかし、適切なアプローチで劇的に改善できる病気でもあります。

5-1. 治療の鍵は「食事療法」と「運動療法」

生活習慣の改善は、どんな高価な薬よりも効果的であることが科学的に証明されています。

  • 食事の質を抜本的に変える
    • 果糖(フルクトース)を避ける:ジュースや甘い菓子類に含まれる果糖は、肝臓で直接脂肪に変換されるため、避けることが望ましいです。
    • 食物繊維の積極摂取:海藻、キノコ、野菜を先に食べると、血糖値の上昇(スパイク)を抑える効果があるとされます。
    • 良質な脂質を選ぶ:青魚(EPA/DHA)やオリーブオイルを優先し、加工肉やトランス脂肪酸を控えるようにしましょう。
  • 継続可能な運動
    • 週に150分以上のウォーキングなどの有酸素運動に加え、週2〜3回の「スクワット」などの筋トレを組み合わせるとよいとされます。筋肉量が増えると、肝臓にたまった脂肪の燃焼効率が上がります。

5-2. 体重減少がMASHに与える影響

減量はMASHの克服において、重要です。海外の研究では、現在の体重から7〜10%減量することで肝臓の炎症だけでなく、進行した線維化も改善したという報告があります。ただし、急激にではなく、ゆっくり体重を落としていくことが、リバウンドを防ぎ肝臓への負担を最小限にするコツです。

MASHを克服するためのアプローチ 食事の質を抜本的に変える、継続可能な運動、7〜10%の減量
Geniniで生成した画像をもとに作成

5-3. 期待される薬物療法と最新研究

これまでMASLDやMASHに対して正式に承認された薬はありませんでしたが、2024年に米国食品医薬品局(FDA)によって「レスメチロム(resmetirom)」という薬がMASLD/MASHの治療薬として承認されました。この薬は「甲状腺ホルモン受容体ベータ作動薬」と呼ばれる種類のもので、日本では未承認(2026年3月現在)ですが、新しい治療選択肢として注目されています。

ほかにもMASHの改善に向けて、いくつかの新しいメカニズムを持つ薬の臨床試験が進行しています。

その中の一つが「チルゼパチド(Tirzepatide)」です。この薬は、インクレチン関連薬(GIP/GLP-1受容体作動薬)と呼ばれ、もともと糖尿病や肥満症の治療薬として開発されましたが、MASHに対しても有効であることがわかってきました。

国際共同第2相試験(SYNERGY-NASH試験)において、線維化の悪化を伴わずにMASHを消失させる効果や、線維化の改善効果、さらに顕著な体重減少効果が確認されています。現在、長期投与による有効性や安全性を確認する第3相試験(SYNERGY-Outcomes試験)が世界規模で進められています。

インクレチン関連薬は、特に糖尿病や高度肥満を合併しているMASH患者さんにとって、非常に強力な治療選択肢となる可能性があります。

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まとめ:あなたの肝臓を守るために

MASHは、命に関わる可能性のある重大な病気です。しかし、早期に発見し、食事や運動、そして必要に応じて専門医による治療を受ければ、肝臓は再生し、健康を取り戻すことができます。

まずは健康診断の結果を見直し、数値に不安がある場合は、早めに肝臓専門医に相談することから始めましょう。

参考資料

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監修

社会医療法人 寿楽会 大野クリニック 院長

片山 和宏 先生

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