- 肥満と関連する病気の種類
- 肥満によって病気が連鎖しやすくなる理由
- 肥満によるリスクを減らすための対策方法
健康診断で「肥満(BMI25以上)」や「要再検査」の通知を受け、将来、心筋梗塞や脳卒中のような大きな病気になるのではないかと不安や危機感を感じる方もいるかもしれません。
実際、肥満は糖尿病・高血圧・脂質異常症など、さまざまな生活習慣病と関係しています。また、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳卒中などの病気につながることもあります。では、肥満に関連する病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
この記事では、肥満と関連する病気の種類や健康への影響、リスクを減らすための対策についてわかりやすく解説します。
肥満で注意が必要な病気(生活習慣病・代謝系)

肥満によって脂肪が過剰に蓄積すると、血糖値や脂質、血圧などのバランスが崩れやすくなります。こうした状態が続くことで、さまざまな生活習慣病や代謝系の病気を引き起こしやすくなります。
2型糖尿病
2型糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が増えすぎてしまう病気です。肥満、特に内臓脂肪が増えると、「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが効きにくくなります。これを「インスリン抵抗性」と呼び、血糖値が下がりにくくなります。高血糖の状態が続くと、血管の内側の細胞が傷つきやすくなり、動脈硬化を進める原因になります。
初期症状としては、喉が渇きやすくなる、尿の回数が増える、疲れやすいといったものが挙げられますが、かなり進行するまで自覚症状がないことも珍しくありません。進行すると、神経障害や網膜症、腎機能障害などの合併症につながることがあります。
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脂質異常症
脂質異常症とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が基準値より高い、あるいはHDL(善玉)コレステロールが低い状態を指します。肥満、とくに内臓脂肪が多い場合は、中性脂肪が増えやすく、HDL(善玉)コレステロールが低下しやすくなります。
脂質異常症そのものには自覚症状がほとんどなく、健康診断で初めて異常に気づくケースも多い病気です。しかし、血液中の脂質バランスが乱れた状態が続くと、血管の壁にコレステロールがたまりやすくなり、動脈硬化につながることがあります。
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高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が高くなっている状態です。尿酸が増えすぎると結晶化し、足の親指の付け根などの関節にたまることで、激しい痛みを伴う「痛風」を引き起こすことがあります。肥満の方は、尿酸が作られやすくなる一方で、体の外へ排出されにくくなるため、尿酸値が高くなりやすい傾向があります。
「痛風発作」の激しい痛みがよく知られていますが、高尿酸血症は関節だけでなく腎臓にも影響を及ぼすことがあります。尿酸値が高い状態が続くと、尿酸の結晶が腎臓にたまり、腎機能の低下につながる場合があります。
脂肪肝(MASLD/MASH)
脂肪肝は、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態です。近年では、アルコール以外の原因で起こる脂肪肝を「MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)」と呼び、その中でも炎症や肝細胞の障害を伴う進行性のものを「MASH」と分類しています。
脂肪肝の段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると肝硬変や肝がんにつながることがあります。健康診断の血液検査では、AST、ALT、γ-GTPなどの肝機能数値の異常から見つかるケースもあります。
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肥満に関連する病気(心臓・血管系)
肥満は、心臓や血管にもさまざまな影響を与えます。高血圧や動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳卒中などの循環器系の病気につながることがあります。
高血圧
肥満になると、増えた体重を支えるために、心臓はより強い力で血液を送り出さなければならなくなります。また、脂肪組織から分泌される物質が血管を収縮させたり、塩分の排泄を妨げたりすることも、血圧を上げる要因となります。
高血圧の状態が続くと、血管に負担がかかり、徐々に動脈硬化が進みやすくなります。一方で、自覚症状が乏しく、日常生活では気づきにくいことも少なくありません。
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心筋梗塞・狭心症
心筋梗塞や狭心症は「冠動脈疾患」と呼ばれ、心臓に酸素を送る冠動脈が狭くなったり(狭心症)、詰まったりする(心筋梗塞)病気です。日本人男性を対象とした研究では、BMI30以上の人は、BMI23以上25未満の人と比べて、虚血性心疾患の発症リスクが2倍程度高いことが報告されています。
肥満に加えて、高血圧・糖尿病・脂質異常症が重なると、動脈硬化が進みやすくなることが知られています。こうした危険因子が複数重なることで、冠動脈疾患を含む心血管疾患につながりやすくなります。
脳梗塞・脳出血
脳の血管が詰まるのが脳梗塞、破れるのが脳出血であり、これらを総称して「脳卒中」と呼びます。肥満に伴う動脈硬化は、脳の細い血管を脆くしたり、太い血管に血栓を作ったりする最大の原因の一つです。
脳卒中は、麻痺や言語障害などの後遺症につながることがあり、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があります。特に高血圧や動脈硬化との関連が深く、肥満に伴う生活習慣病が重なることでリスクが高まると考えられています。
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肥満が影響するその他の病気
肥満の影響は内臓や血管だけでなく、睡眠の質、関節の健康、そして将来のがん発症リスクにまで広く及びます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。首の周りに脂肪がつくと気道が圧迫されて狭くなり、いびきや無呼吸が起こりやすくなります。
「しっかり寝たつもりでも日中に強い眠気がある」「起床時に頭が重い」といった症状がみられることもあります。睡眠中の酸素不足は心臓や血管にも影響を与え、高血圧や心不全などと関連することが知られています。
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変形性膝関節症
体重が重くなるほど、歩行時や階段昇降時に膝にかかる負担は増大します。肥満の方はそうでない方に比べ、膝の軟骨がすり減りやすく、痛みで歩行が困難になる「変形性膝関節症」を発症しやすいことが知られています。
膝の痛みによって運動量が減ると、体重が増えやすくなり、さらに膝への負担が大きくなる悪循環につながる場合があります。体重の増加は関節への負担にも影響するため、肥満との関連が深い病気のひとつとされています。
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月経異常・不妊
女性の場合、肥満はホルモンバランスを乱す要因のひとつです。脂肪組織からはエストロゲンというホルモンの一部が作られますが、エストロゲンが過剰になると、排卵障害や月経不順につながることがあります。
こうしたホルモンバランスの乱れは、不妊症との関連が指摘されているほか、子宮体がんや閉経後乳がんなど、一部のがんリスクとの関連も報告されています。
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逆流性食道炎
胃の内容物が食道に逆流し、胸焼けや喉の違和感を引き起こす病気です。肥満、特に腹部肥満がある方は、腹圧が高まることで胃が圧迫され、逆流を防ぐ筋肉の働きが弱まりやすくなります。
「食後に胸が焼ける」「酸っぱいものが上がってくる」といった症状が代表的です。逆流が慢性的に続くと、食道の粘膜に炎症が起こり、食道炎につながる場合があります。
肥満と関連するがん
肥満は、特定のがんの発症リスクとも密接に関連していることが指摘されています。過剰な脂肪細胞から分泌される物質や、慢性的な炎症状態、ホルモンバランスの変化が、がんの発生や進行に関わると考えられています。関連が報告されているがんとしては、大腸がんや閉経後乳がん子宮体がんなどがあります。
病気は連鎖する?「メタボリックドミノ」とは
ここまで挙げた病気の多くは、それぞれが独立しているわけではなく、互いに連鎖する性質を持っています。この考え方は「メタボリックドミノ」と呼ばれています。
起点となるのは「内臓脂肪の蓄積」です。内臓脂肪が増えることでインスリンの働きが低下し、高血糖、脂質異常、高血圧といった代謝異常が連鎖的に現れやすくなります。こうした状態が続くと動脈硬化が進行し、最終的には心筋梗塞や脳卒中、腎機能障害などにつながる場合があります。
さらに、病気によって活動量や睡眠の質が低下すると、体重が増えやすくなり、肥満や代謝異常がさらに進行しやすくなることもあります。
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肥満は寿命を縮める?
特に高度肥満では、心血管疾患や糖尿病関連合併症との関連が強く、健康寿命だけでなく平均寿命にも影響を及ぼすことが知られています。
実際、日本人約35万人を対象とした大規模研究では、BMI30以上の人はBMI23〜25の人と比べて、総死亡リスクが約1.3倍高いことが報告されています。
一方で、体重の減少や生活習慣の改善によって、血圧・血糖・脂質などの状態が改善することも知られています。肥満に関連するリスクは固定されたものではなく、体重や生活習慣の変化によって変動することが特徴です。
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肥満による病気を予防するには

肥満に関連する病気は、自覚症状が少ないまま進行するものも多くあります。まずは現在の健康状態を把握し、体の変化に早めに気づくことが重要です。
定期的に健診や人間ドックを受ける
健康診断や人間ドックは、血圧・血糖・脂質・肝機能などの変化を確認する機会になります。BMIだけでなく、各種検査値を継続的に確認することで、肥満に関連するリスクを把握しやすくなります。
再検査の場合は精密検査を受ける
健康診断で「要再検査」と判定された場合は、必要に応じて医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。自覚症状がない段階でも、検査によって代謝異常や生活習慣病が見つかることがあります。
減量して発症リスクを軽減する
肥満に関連するリスクは、体重の変化によって改善することも知られています。実際、現在の体重から3〜5%程度減量することで、血圧・血糖・脂質などの改善がみられることが報告されています。
食事や運動を極端に変えるのではなく、無理なく続けられる範囲で生活習慣を見直していくことが重要です。
病気が原因で肥満になる場合も
「努力しているのに体重が減らない」ときは、背景に別の病気が関係していることがあります。例えば、病気によってホルモンバランスが乱れると、代謝が低下したり、食欲が増加したりして、体重が増えやすくなることがあります。こうしたケースでは、生活習慣の見直しだけでなく、原因となる病気そのものへの対応も重要です。
体重増加と関連することがある病気として、以下のようなものが知られています。
- 甲状腺機能低下症:甲状腺ホルモンが不足し、代謝が低下することで体重が増えやすくなる
- クッシング症候群:副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され、腹部や顔を中心に脂肪がつきやすくなる
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):インスリン抵抗性やホルモンバランスの変化によって、脂肪が蓄積しやすくなる女性特有の疾患
- インスリノーマ:膵臓の腫瘍によってインスリンが過剰に分泌され、低血糖に伴う過食につながることがある
病気を発症している「肥満症」の方は医療機関で減量治療を
単なる「肥満」と、医学的に減量治療が必要な「肥満症」は区別されています。BMIが25以上で、かつ高血圧・糖尿病・脂質異常症などの健康障害を伴う場合は、「肥満症」と診断されることがあります。
医療機関では、医師や管理栄養士による食事・運動指導に加え、必要に応じて薬物療法などが行われる場合もあります。生活習慣の改善だけでは難しいケースでは、専門的なサポートを受けながら減量に取り組むことも選択肢のひとつです。
まとめ
肥満は、糖尿病や高血圧、脂質異常症をはじめ、心血管疾患や睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝など、さまざまな病気と関連しています。また、それぞれの病気は独立しているわけではなく、互いに影響し合いながら進行することも特徴です。
一方で、肥満に関連するリスクは固定されたものではなく、体重や生活習慣の変化によって改善することも知られています。健康診断や人間ドックなどを活用しながら、自分の体の状態を継続的に把握していくことが大切です。
参考資料
- National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIH/NIDDK)「Health Risks of Overweight & Obesity」
- National Cancer Institute(NIH/NCI)「Obesity and Cancer」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と肥満症」「肥満と健康」「糖尿病」「メタボリックシンドローム改善のための基本戦略」
- Itoh H., Metabolic domino: new concept in lifestyle medicine., Drugs Today (Barc).
- Sasazuki S, et al., Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies., J Epidemiol.
- Chei CL, et al., Body mass index and weight change since 20 years of age and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based Study., Int J Obes (Lond).
- Hampel H, et al., Meta-analysis: obesity and the risk for gastroesophageal reflux disease and its complications., Ann Intern Med.
監修
崔 静姫 先生