健康診断で「脂肪肝」と言われたものの、「お酒は飲まないし大丈夫」「少し太っているだけ」と、そのままにしていませんか?
近年、脂肪肝は体質や生活習慣との関係からMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、さらにその進行型である MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎) という形で考えられるようになりました。MASHは自覚症状がほとんどない一方で、放置すると肝硬変や肝がんへ進行する可能性がある病気です。
では、実際に医療機関では、どのように「MASHかどうか」が判断されるのでしょうか。この記事では、健康診断をきっかけに、どんな検査を経て診断に至るのかを、患者さんの目線でわかりやすく解説します。
MASHの診断を受ける前に知っておきたい基礎知識
MASLDとMASHの違いと診断上の考え方
MASLDは、肝臓に脂肪がたまった状態に、肥満・糖尿病・脂質異常症などの代謝異常が関係している脂肪肝の総称です。
その中で、
- 肝臓の脂肪蓄積
- 炎症
- 肝細胞の傷害
が認められる状態を MASH と呼びます。
以前は「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」と呼ばれていましたが、現在は「体質や生活習慣による代謝異常が深く関わる病気」という考え方が重視され、この名称が使われるようになっています。
MASHの診断はどうやって行われるのか
健康診断がMASH診断のきっかけになることが多い
MASHの診断は、いきなり専門的な検査から始まるわけではありません。多くの場合、健康診断が最初のきっかけになります。
診断の入口となる所見には、次のようなものがあります。
- AST・ALTなど肝機能数値の異常
- 超音波検査で指摘される脂肪肝
- 肥満や内臓脂肪型肥満
- 糖尿病、脂質異常症、高血圧の合併
これらが重なる場合、MASHの可能性を考えて詳しい検査が検討されます。
血液検査によるMASH診断の考え方
血液検査では、肝臓の炎症やダメージの程度を推測します。
- AST・ALT
- γ-GTP
- 血小板数
- 血糖値やHbA1c
- 脂質(中性脂肪、LDLコレステロールなど)
これらの数値を単独で見るのではなく、組み合わせて評価することが重要です。
数値が軽度でも、長期間改善しない場合は注意が必要です。
画像検査によるMASH診断の役割
画像検査は、肝臓の状態を目で確認するために行われます。
- 腹部超音波検査:脂肪肝の有無を確認
- CT検査:脂肪の分布や他疾患の除外
- MRI・MRE:脂肪量や線維化の程度をより詳しく評価
これらの検査は体への負担が少なく、MASHが疑われる患者さんの評価や経過観察に役立ちます。血液検査の結果とあわせて、肝臓の状態を総合的に判断するために用いられます。
肝生検によるMASH診断とその位置づけ
肝生検は、肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べる検査です。脂肪の量、炎症、線維化を直接確認できるため、MASH診断において重要な役割を担っています。
この点について、診療ガイドラインでは次のように示されています。
「NAFLD/NASH の診療において予後規定因子である肝線維化進行度の評価は最も重要な項目である.
引用:日本消化器病学会・日本肝臓学会 NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020(改訂第2 版)CQ3-4
日欧米のガイドラインやガイダンスにおいて肝線維化評価の gold standard は肝生検であるが,侵襲的な検査であり,すべての患者に施行することや,繰り返し行うことが困難であるなどの一面が指摘されている」
かみくだいて説明すると…
MASHでは、肝臓の線維化がどの程度進んでいるかが、その後の進行や重症化のリスクを判断するうえでとても重要とされています。
肝生検は、その線維化を最も正確に評価できる方法とされていますが、体への負担があるため、すべての患者さんに行われる検査ではありません。
そのため実際の診療では、血液検査や画像検査などの負担の少ない方法でまず評価を行い、必要な場合に限って肝生検を検討する、という流れが一般的です。
MASHの診断基準が一律ではない理由
MASHは段階的に進行する病気だから
MASHは、「ある・ない」を単純に分けられる病気ではありません。
脂肪肝から炎症、線維化へと連続的に進行する病態だからです。
検査結果だけでなく背景や経過を含めて診断される
そのため、現在のMASH診断は、
- 検査結果
- 肥満や糖尿病などの背景
- 生活習慣
- 経過の変化
を総合的に判断して行われます。
診断基準や評価方法は、国内外で現在も見直しや研究が進められており、「早期に見つけ、重症化を防ぐ」ことが重視されています。
MASH診断のために早めの受診がすすめられる人
健康診断で異常を指摘されたことがある方
次のような方は、症状がなくても一度医療機関で相談することが大切です。
- 健康診断で脂肪肝を指摘された
- 肝機能の数値(AST・ALTなど)が基準値を超えている
- 毎年同じような指摘を受けている
健康診断は、MASHを含む脂肪肝疾患を早期に見つけるための大切なきっかけになります。
肥満や生活習慣病がある方
肥満があり、肝機能異常が続いている方や、糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病がある方は、MASHのリスクが高くなることが知られています。
自覚症状がなくても、肝臓では負担が蓄積している場合があり、早めに状態を確認することが将来の重症化予防につながります。
生活改善をしても数値が改善しない方
食事や運動などの生活改善に取り組んでいても、肝機能の数値がなかなか改善しない場合は、背景にMASHが関係している可能性も考えられます。
「努力が足りないから」と自己判断せず、専門的な評価を受けることで、適切な対応が見えてくることがあります。
早期受診が将来の肝臓を守る
MASHは、早期であれば改善が期待できる病気です。
一方で、進行すると肝硬変や肝がんにつながる可能性もあります。
症状が出てから受診するのではなく、「気になる指摘があった段階」で相談することが、将来の肝臓を守る第一歩になります。
医師からのメッセージ:診断は「不安にするため」ではありません
MASHの診断は、患者さんを不安にさせるためのものではありません。「今の状態を正しく知り、これ以上進行させないために何ができるか」を一緒に考えるためのものです。
MASHは、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いため、健康診断の結果が、病気と向き合う最初のきっかけになることも少なくありません。
自覚症状がないからこそ、「まだ大丈夫」と思わず、早めに状態を確認することが、将来の肝臓を守ることにつながります。
気になる方は、ぜひ専門医にご相談ください。
参考文献・情報源
- American Association for the Study of Liver Diseases(AASLD)「New MASLD Nomenclature」
- U.S. National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK)「Symptoms & Causes of NAFLD & NASH」
- MedlinePlus(U.S. National Library of Medicine, NIH)「Fatty Liver Disease」
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASH 診療ガイドライン2020(改訂第2 版)」
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監修
内田 賢一 先生