肥満症の治療・治験情報を、見逃さないために。あなたに合わせた新着・重要ニュースや治験情報をお届けします。会員登録はこちらから。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と肥満の関係は?放置厳禁な理由と治療法を解説

この記事でわかること
  1. 肥満と無呼吸が招く悪循環の仕組み
  2. 減量だけで解決しない真の原因
  3. 睡眠と体重を同時に整える解決策

「いびき」だけではない睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる、あるいは浅くなる状態を指します。この状態では体内に十分な酸素が供給されず、睡眠の質が著しく低下します。

特に多いのは「閉塞性睡眠時無呼吸」で、睡眠中に上気道(鼻からのどにかけての部分)が塞がることで空気の流れが途絶えるタイプです。肥満はこの気道狭窄(空気の通り道が狭くなること)を引き起こす重要な要因のひとつとされています。

いびきとして周囲に指摘されることで気づくことも多いものの、実際にはそれだけにとどまりません。日中の強い眠気や集中力の低下、朝の頭痛や倦怠感といった症状を引き起こすだけでなく、未治療のままでは心血管疾患などのリスク上昇にもつながることが知られています。

肥満症とSASが強く関連する理由

肥満と起動狭窄の説明図
Geminiで生成した画像を元に作成

肥満症は、SASの発症や進行に深く関わる要因のひとつと考えられています。その背景には、体重の増加に伴って起こる、呼吸関連のさまざまな変化があります。

まず大きなポイントになるのが、気道の狭さです。体重が増えると、舌やのどのまわりに脂肪がつきやすくなり、空気の通り道である上気道が狭くなります。もともとこの部分は支えが少なくやわらかいため、睡眠中に筋肉の力がゆるむと、さらに閉じやすくなり、呼吸が止まる状態が起こります。

また、肥満は呼吸そのものにも影響を与えます。おなかや胸のまわりに脂肪が増えると、肺が十分に広がりにくくなり、呼吸が浅くなったり不安定になったりします。その結果、気道を内側から支える力も弱くなり、無呼吸が起こりやすくなります。

さらに、脂肪のつき方にも個人差があります。体重が同じくらいでも、首まわりやのどに脂肪がつきやすい人では、気道がより狭くなりやすく、症状が出やすいことがあります。

このように、いくつかの要因が重なり合うことで、肥満症では無呼吸が起こりやすくなり、体重の増加とともに症状が悪化していく傾向がみられます。

見逃されやすいもう一つの側面:SASが肥満を悪化させる

重要なのは、肥満がSASを引き起こすという一方向の関係ではないという点です。実際には、SASそのものが体重増加を招き、肥満を悪化させる可能性があることがわかってきています。

その背景のひとつが、睡眠の質の低下です。SASでは、無呼吸のたびに体が覚醒に近い状態となり、深い睡眠が分断されます。その結果、食欲を調整するホルモンのバランスが乱れ、空腹を感じやすくなったり、満腹感を得にくくなったりします。一般的に睡眠不足では、カロリーの高い食品(甘いものや脂っこいものなど)を欲しやすくなる傾向があることも知られています。

さらに、十分に眠れていない状態が続くと、日中の強い眠気や倦怠感が出やすくなります。これにより身体を動かす機会が減り、結果として消費エネルギーが低下します。「疲れて動けない」という状態が続くことで、体重が増えやすい状況が生まれます。

加えて、SASは代謝にも影響を及ぼすと考えられています。断続的な低酸素状態や睡眠の分断は、インスリンの働きを弱めたり、脂質代謝を乱したりすることがあり、これが体脂肪の蓄積につながる可能性があります。

このように、SASは単なる睡眠の問題にとどまらず、食欲、活動量、代謝といった複数の面に影響を与えます。その結果として、肥満とSASは互いに影響し合い、「肥満がSASを悪化させ、SASがさらに肥満を進める」という悪循環が生じやすくなります。

肥満だけが原因ではないが、重要なリスクである

近年の研究では、SASは肥満の人だけに起こる病気ではないことも明らかになっています。実際、標準体重の人でもSASがみられるケースは少なくなく、体重だけでは説明できない要因も関与していると考えられています。

たとえば、あごの形や顔立ちなどの骨格的な特徴や、のどの筋肉の働き、呼吸の安定性など、体重以外の要因も関与します。このため、「太っていないから大丈夫」とは必ずしもいえません。

一方で、肥満が重要なリスク因子であることに変わりはありません。体重が増えるほど気道は狭くなりやすく、実際に肥満のある人ではSASの頻度が高いことが多くの研究で示されています。特に、首まわりや上半身に脂肪がつきやすい場合は、より影響を受けやすいとされています。

また、肥満がある場合には、SASが重症化しやすい傾向もみられます。無呼吸の回数が増えたり、低酸素の影響が強くなったりすることで、体への負担も大きくなります。

このように考えると、SASは「肥満の人だけの病気」ではありませんが、肥満がある場合には見逃してはいけない重要なサインのひとつといえます。いびきや日中の眠気といった症状がある場合には、体重の影響も含めて評価することが大切です。

減量は重要な第一歩

肥満を伴うSASにおいて、まず取り組むべきなのが体重管理です。体重を減らすことで気道への負担が軽くなり、無呼吸の改善が期待できます。

実際に、減量によって無呼吸の回数が減ったり、症状が軽くなったりするケースは多く報告されています。また、減量はSASそのものだけでなく、高血圧や糖尿病などの合併症リスクの低減にもつながるため、全身の健康という観点からも大きな意義があります。

体重を減らすだけでは解決しないことも

しかし一方で、体重を減らせば必ずSASが解消するわけではありません。減量によって症状が軽くなったとしても、無呼吸が完全にはなくならないケースも少なくありません。

その理由としては、体重以外の要因も関係していることが挙げられます。たとえば、もともとのあごやのどの形によって気道が狭くなりやすい場合や、睡眠中に気道を支える筋肉の働きが弱い場合、あるいは呼吸のリズムが不安定になりやすい場合などが影響します。このような要素は、体重が減ってもすぐには変わらないことがあります。そのため、見た目の体重だけでは評価しきれない部分もあります。

また、これらに加えて、呼吸を調整する働きの安定性や、睡眠中に気道を支える筋肉の反応のしやすさ、わずかな呼吸の変化で目が覚めやすいといった体質も関与することがわかっています。

このように考えると、減量はとても重要である一方で、それだけに頼るのではなく、必要に応じてSASそのものに対する治療も組み合わせていくことが大切です。単に「体重を減らせばよい」という理解ではなく、状態に応じた治療を選択していくことが求められます。

治療は「肥満症」と「SAS」を同時に考える

「肥満症」と「SAS」を同時に考える治療の説明図
Geminiで生成した画像を元に作成

肥満症とSASを併せ持つ場合には、両者を切り分けるのではなく、同時に治療していく視点が重要になります。それぞれが影響し合う関係にあるため、どちらか一方だけに対応しても、十分な改善が得られないことがあるためです。

SASに対しては、CPAP(持続陽圧呼吸療法)を中心とした治療が広く用いられます。これは、睡眠中に空気を送り込むことで気道がふさがるのを防ぎ、呼吸を安定させる治療です。比較的早い段階から症状の改善が期待できるため、日中の眠気や集中力低下などの軽減にもつながります。症例によっては、マウスピース型の装置(口腔内装置)や外科的治療が検討されることもあります。

一方で、肥満症に対しては、食事や運動といった生活習慣の見直しが基本となります。さらに、状況に応じて薬物療法や外科的治療が選択されることもあり、長期的な体重管理が重要になります。

重要なのは、これらを「別々の問題」として扱うのではなく、ひとつのつながった病態として捉えることです。たとえば、CPAPによって睡眠の質や日中の眠気は改善しますが、それだけで体重が減るとは限らないこともわかっています。そのため、SASの治療と並行して、食事や運動などによる体重管理に取り組んでいくことが大切です。

放置すべきでない理由

SASを未治療のまま放置すると、単なる睡眠の問題にとどまらず、全身の健康に影響が及びます。睡眠中に呼吸が止まることで、体は繰り返し低酸素状態にさらされ、そのたびに血圧や心拍数が変動します。このような状態が長く続くことで、血管や心臓への負担が積み重なっていきます。

その結果として、心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントのリスクが高まるほか、高血圧や糖尿病との関連も指摘されています。また、十分な睡眠がとれないことで日中の強い眠気や注意力の低下が生じ、交通事故や労働災害のリスクにもつながります。

さらに、こうした影響は徐々に進行することが多く、自分では気づきにくい点にも注意が必要です。気づかないまま生活の質が低下したり、慢性的な体調不良として現れたりすることもあります。

これらのリスクは、肥満を伴う場合にはさらに複合的に増大する可能性があります。肥満そのものも心血管疾患や代謝異常のリスク因子であるため、両者が重なることで体への負担がより大きくなると考えられます。そのため、早期に適切な対応を行うことが重要です。

まとめ|「体重だけの問題」として片付けないために

肥満症とSASは、それぞれ独立した問題ではなく、互いに影響し合う関係にあります。肥満はSASの重要な発症要因である一方、SASもまた肥満を悪化させる要因となります。

さらに、減量のみでは十分に改善しないケースがあることから、両者を包括的に評価し、適切に治療していくことが重要です。

いびきや日中の眠気といった症状がある場合、それを単なる生活習慣の問題として捉えるのではなく、医療的な評価が必要なサインとして考えることが求められます。気になる症状がある場合には、早めに医療機関で相談することが、長期的な健康リスクの軽減につながります。

参考資料

監修

さい内科・消化器内科クリニック

崔 静姫 先生

記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。
本サイトに掲載されている記事や画像等の無断転載・無断使用を禁じます。