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「止まらない食欲」「続かない運動」、医学的に正しい“お悩み別”アドバイス

はじめに:減量がうまくいかないのは「意志が弱いから」ではない

「明日から甘いものを控える」「今日から毎日1時間歩く」…。決意をしたはずなのに、思うように行動できず、自己嫌悪に陥る。そんな経験はありませんか?それは、決してあなたの「意志が弱いから」ではありません。大切なのは、体の仕組みを知り、適切な「戦略」を立てることです。今回は、読者の皆さまから寄せられた食事や運動に関する4つのお悩みにお答えします。

お悩み①:ストレスが溜まると食欲が止まらなくなってしまって、困っています…!どうしたらいいですか?

強いストレスを感じると、気づかないうちに食べ過ぎてしまい、自分を責めてしまう方は少なくありません。しかしそれは、意志が弱いからではなく、体が無意識に働かせる“防御機構”によるものかもしれません。これまでの多くの研究でも、極端な過食や拒食の背景には強いストレスが関係していると示されています。そのため一部の研究者は、食べ過ぎとは現実から一時的に離れるための回避行動、目の前のつらさに対する一つの対処の形だと説明しています。つまり、このような体の元々もつ防御反応を理解し、正しい知識と健康的な対処法を身につけることで、この食行動を防ぐことができる可能性があります。

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対処法のご紹介

ストレスによる食べ過ぎへの対処法には主に3つあります。1つ目は、ストレスから逃れる手段を食事以外に持つことです。例えば軽い運動や趣味などで気分転換を図ります。2つ目は、自分が食べ過ぎていることに気づき、行動を少しずつ整え、うまくできた自分をきちんと認めてあげることです。これは専門的にはオペラント条件付けと呼ばれます。3つ目は、一人だけで抱え込まず、家族や友人など身近な人の力を借りることです。

ストレスによる食べ過ぎは自分の弱さだと責める必要はありません。周りの支えを受けながら、ストレスを和らげる別の方法を見つけ、小さくできたことを認めていくことで、少しずつ無理なく変えていきましょう。

お悩み②:仕事で夕食が遅い時間になることが多く、たくさんの量を食べてしまいます。何か工夫できることはありますか?

食事をとるタイミングは、肥満症でお悩みの方にとってとても大切なポイントです。夕食の時間が遅くなると、血糖値が上がりやすくなり、脂肪の分解がうまく進まなくなるため、体重が増えやすくなるという報告があります。また、夜遅く食べることは朝食を抜いてしまうことにもつながり、その結果、強い空腹感が生じて次の食事で食べ過ぎてしまう可能性があります。さらに、食事をとる時間は体重の増減だけでなく、体内時計の乱れにも関係しています。体内時計が乱れると、ホルモンの分泌バランスが崩れ、糖尿病や心臓・血管の病気のリスクが高まるともいわれています。

対処法のご紹介

国が示している食生活の指針でも、規則正しい食事の大切さが強調されています。夜遅い食事や間食はできるだけ控え、毎日きちんと朝食をとることが勧められています。また、食べるスピードも重要なポイントです。早食いは肥満と関係があるとされているため、ゆっくり食べることを意識しましょう。難しく考える必要はありません。大切なのは、食事を楽しむことです。食事を「楽しみの時間」として考えることで、規則正しい回数や時間を守りながら、会話を楽しみ、よく噛んでゆっくり味わって食べることができるようになります。健康的な食事とは、何を食べるかだけでなく、食べる時間帯、かける時間、一緒に食べる人やその場の環境なども含めて考えることがとても大切なのです。

お悩み③:「運動をしないと!」と思うほど、なかなか動けません。何から始めればいいですか?

運動が体に良いことはわかっているけれど、なかなか最初の一歩を踏み出せない人は多いのではないでしょうか。国が行った調査では、肥満のある男女のうち、なんと約35%の人が「運動習慣を見直すことに関心がない」または「改善するつもりはない」と答えています。つまり、肥満で悩んでいる多くの人が、あなたと同じように体をあまり動かせていないのが現状なのです。

対処法のご紹介

運動について、専門の学会からは「1日30分以上、毎日、有酸素運動を行うこと」をすすめています。ただ、「いきなりそんなにできない」と感じる方も多いと思います。そのような場合は、まず「座っている時間を少しずつ減らす」ことから始めてみましょう。実は、座っている時間を減らすだけでも、死亡のリスクを下げる効果があると言われています。この方法なら、わざわざ運動する時間や場所、特別な道具を準備する必要もありません。今この瞬間から、無理なく始めることができるはずです。

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お悩み④:家族や友だちに「一口くらい大丈夫だよ」と勧められると、断りきれずに食べてしまうことがあります。どのように伝えるのが良いでしょうか?

おいしそうな料理が目の前に並んでいて、まわりの人から「少しくらいなら食べてもいいんじゃない?」と言われると、つい「それなら少しだけ」と食べてしまい、そのうちに量が増え、結果的にたくさん食べてしまい、あとで罪悪感を抱いた経験はないでしょうか。このような現象は「フット・イン・ザ・ドア」と呼ばれる心理行動のひとつで、人は「自分は協力的な人間だ」というイメージを保とうとするため、最初に小さな誘いを引き受けると、その後の誘いも断りにくくなってしまうのです。

対処法のご紹介

親しい人との関係を壊さずに上手に誘いを断る方法のひとつに「ポライトネス理論」という考え方があります。これは、相手の気持ちを傷つけずに、楽しくスムーズにやりとりを進めるための話し方の工夫のことです。具体的には、「こんなにおいしそうな料理を勧めてくれてありがとう」とまず相手に感謝を伝えること、「私もこの料理、とても食べてみたい」と気持ちに共感を示すこと、そして「でも今日はちょっと控えておきます」とやんわり断ることで、相手に不快な思いをさせずに断ることができます。

おわりに:100点ではなく、まずは「60点継続」を目指そう

食事や運動を続けようとしても思い通りにいかず、「なかなか続かない」と感じている方は多いのではないでしょうか。そもそも私たちの「食欲」は生まれつき備わっている自然なもので、食べることは生きていくうえでとても大切な働きです。そのため「食べたい」と感じたときに食べてしまった自分を責めすぎたり、一人で悩みを抱え込んだりする必要はありません。また「今日は体を動かしたくないな」と感じる方や、「親しい人との関係を壊したくない」と思ってその場の雰囲気に流されてしまう方も、実はたくさんいると思います。大切なのは、正しい対処法を知り、それをもとに無理のない取り組みを少しずつ始めていくことです。その中には、家族や周りの人のサポートを上手に頼ることも含まれますし、自分自身の努力や小さな達成をしっかり認めて褒めてあげることも大切です。そうした積み重ねが、あなたの取り組みを少しずつ前進させ、やがて成果へとつながっていくはずです。

医師プロフィール

濵 知明 先生
東京医科大学病院 循環器内科講師 / 心臓リハビリテーションセンター副センター長

濵 知明 先生

2008年福井大学医学部医学科を卒業。諏訪赤十字病院にて初期研修、内科後期研修、国立循環器病研究センター心臓血管内科、東海大学医学部付属八王子病院循環器内科を経て2025年から現職。2021年から米国メイヨークリニックへ留学し、現在は同クリニック共同研究員。循環器専門医、総合内科専門医、老年科専門医、日本リハビリテーション栄養学会理事、日本臨床運動療法学会評議員、日本腎臓リハビリテーション学会代議員等。

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