- 統合失調症で体重が増える原因
- 薬を続けながらできる肥満対策
- 医師に相談する目安
統合失調症の治療を始めてから体重が増え、「薬のせいなのでは」と気になっている人もいるかもしれません。この記事では、統合失調症で体重が増える原因や肥満を合併する割合、肥満によって生じる健康上のリスク、薬を続けながらできる対策について詳しく説明します。
統合失調症で肥満になりやすい理由
統合失調症は、ものの捉え方や考え方、感情、行動などに影響がみられる精神疾患です。幻覚や妄想などの症状がみられることがあり、薬物療法や心理社会的な支援などを組み合わせて治療が行われます。
統合失調症で体重が増える背景には、抗精神病薬の副作用による食欲亢進に加え、陰性症状による活動量の低下、偏食・衝動的な過食などの食行動の変化など、複数の要因が関係しています。生活習慣だけが原因とは限らないため、どのような要因が体重に影響するのかを知っておくことが大切です。

抗精神病薬の副作用による体重増加
統合失調症の治療では、幻覚や妄想などの症状を改善するために抗精神病薬が使われます。抗精神病薬では副作用として体重増加がみられることがありますが、その程度は薬の種類によって異なります。また、同じ薬を服用していても、体重への影響には個人差があります。
抗精神病薬による体重増加には、食欲や満腹感に関係する脳内の仕組みへの作用などが関わると考えられています。例えば、オランザピンやクロザピンなどにみられるヒスタミンH1受容体やセロトニン5-HT2C受容体への作用は、食欲の増加や体重増加と関連するとされています。
陰性症状による生活活動量の低下
統合失調症では、意欲や興味が低下する、エネルギーがわきにくい、日常の活動を計画して続けることが難しいといった「陰性症状」がみられることがあります。こうした症状によって、外出や買い物、家事などの機会が減り、体を動かす時間が少なくなる人もいます。
身体活動量が減ると消費するエネルギーも少なくなるため、食事からとるエネルギーとのバランスによっては、体重増加につながることがあります。
統合失調症患者が肥満を合併する割合
統合失調症患者9,351人を対象としたメタ解析において、肥満がみられた割合は全体で33.0%と報告されています。研究によって対象となる年齢や地域、治療状況、肥満の判定方法などが異なるため、すべての患者さんにそのまま当てはまるわけではありません。統合失調症のある人が必ず肥満になるという意味ではありませんが、肥満がみられることは珍しくないといえるでしょう。
統合失調症と肥満が招く合併症リスク
体重が増えることだけでなく、血糖や血圧、血液中の脂質などに変化がないかを確認することも大切です。これらの異常が重なると、心血管疾患などのリスクにつながる可能性があります。
糖尿病やメタボリックシンドローム
統合失調症とその関連疾患を対象とした大規模なメタ解析では、メタボリックシンドロームがみられた割合は32.5%でした。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加えて、高血圧、高血糖、脂質代謝異常などが重なった状態です。
抗精神病薬の中には、体重だけでなく血糖値や脂質に影響するものもあります。そのため、体重だけを見て判断するのではなく、健診や診察の際に血圧、血糖、HbA1c、コレステロールや中性脂肪なども確認しておくことが重要です。
心血管疾患と健康への影響
統合失調症のある人では、一般人口と比べて心血管疾患のリスクが高いことが報告されています。心血管疾患は重症化すると生命予後にも影響する可能性があるため、体重だけでなく、血糖や血圧、脂質などの変化も確認していくことが大切です。
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服薬を続けながらできる肥満対策
抗精神病薬による体重増加への対策としては、体重を定期的に確認しながら、食事や身体活動を見直す方法があります。体重増加が気になっても自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、精神症状や体調に合わせて無理のない方法に取り組むことが大切です。

無理なく続けられる食事の工夫
体重を減らそうとして、食事を極端に減らしたり特定の食品を完全に抜いたりする必要はありません。主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を基本にしながら、間食や甘い飲み物の量、食事の時間など、変えやすいところから振り返ってみましょう。
例えば、「間食を絶対に食べない」と決めるのではなく、回数や量を決めるなど、続けやすい目標にする方法があります。食事内容や間食を簡単に記録すると、自分では気づきにくかった食べ方の傾向を把握しやすくなり、医師や管理栄養士に相談するときにも役立ちます。
運動療法と生活活動量を増やす工夫
運動習慣がない場合は、最初から長時間のウォーキングや激しい運動を目標にする必要はありません。
身体活動には、運動だけでなく、買い物や掃除、通勤など日常生活で体を動かすことも含まれます。まずは座っている時間を少し減らす、近い場所へ歩いて行く、家事を一つ増やすなど、自分の生活の中でできそうなことから始めるとよいでしょう。体調が安定しない時期や持病がある場合は、運動を始める前に主治医へ相談してください。
家族や多職種によるサポート活用
食事や運動の見直しを一人で続けることが難しい場合は、家族や医療スタッフのサポートを活用する方法があります。家族が食事を一緒に考えたり、散歩や買い物に付き添ったりすることで、日常生活の中で取り組みやすくなることもあります。
また、精神科の主治医だけでなく、看護師、管理栄養士、薬剤師、内科医などに相談できる場合もあります。体重のことを本人だけの問題にせず、必要に応じて周囲の人や専門職と一緒に取り組むことも一つの方法です。
主治医に相談すべきタイミング
「精神科では体重のことを相談しにくい」と感じる人もいるかもしれませんが、体重増加は抗精神病薬で知られている副作用の一つです。薬を始めた後の体重変化や健診結果は、精神科の診察でも伝えておきたい情報です。
体重や血糖値の変化を伝えるポイント
抗精神病薬を始めた、または変更した後に体重が増えた場合は、いつごろからどの程度変化したのかを主治医に伝えましょう。自宅で体重を測っている場合は、記録を残しておくと変化を確認しやすくなります。
あわせて、食欲が強くなった、間食が増えた、眠気が強く活動量が減ったなどの変化があれば伝えておきましょう。健診で血糖値やHbA1c、血圧、コレステロール、中性脂肪などの異常を指摘された場合は、その結果も主治医に見せると、必要に応じて検査や内科受診につなげやすくなります。
内科受診が必要になるサイン
健診などで高血糖、高血圧、脂質異常を指摘された場合や、体重増加が続いている場合は、まず主治医に相談し、必要に応じて内科の受診について確認しましょう。糖尿病や脂質異常症などは、自覚症状がほとんどないまま進むこともあるため、症状の有無だけで判断せず、検査値を確認することが大切です。
まとめ
統合失調症のある人の体重増加には、抗精神病薬の副作用や陰性症状による身体活動量の低下など、複数の要因が関係することがあります。体重が増えた場合も、薬を自己判断で中止するのではなく、主治医に相談しながら食事や身体活動を見直し、体重や血糖、血圧、脂質などを確認していくことが大切です。
参考資料
- National Institute of Mental Health(NIMH)「Schizophrenia」
- 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」「アクティブガイド2023」
- Pillinger T, et al., Comparative effects of 18 antipsychotics on metabolic function in patients with schizophrenia, predictors of metabolic dysregulation, and association with psychopathology: a systematic review and network meta-analysis., Lancet Psychiatry.
- Long J, et al., A meta-analysis of the incidence proportion of obesity and associated risk factors in patients with schizophrenia., Front Psychiatry.
- Mitchell AJ, et al., Prevalence of metabolic syndrome and metabolic abnormalities in schizophrenia and related disorders–a systematic review and meta-analysis., Schizophr Bull.
- Correll CU, et al., Mortality in people with schizophrenia: a systematic review and meta-analysis of relative risk and aggravating or attenuating factors., World Psychiatry.
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監修
古川 拓磨 先生