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甲状腺機能低下症で太る理由とは?体重増加の特徴や症状、治療を解説

この記事でわかること
  1. 甲状腺機能低下症で太る仕組み
  2. 太る以外の症状と検査
  3. 治療後の体重変化と生活習慣

食事量を増やしたつもりはないのに体重が少し増えたまま、なかなか減らない。さらに、だるさやむくみ、冷えなども気になる場合、甲状腺機能低下症が関係していることがあります。

この記事では、甲状腺機能低下症で体重が増える理由やその特徴、ほかにみられる症状、検査・治療について詳しく解説します。

甲状腺機能低下症とは?太る仕組みの基礎知識

甲状腺機能低下症と体重の関係を理解するには、甲状腺ホルモンが体内でどのような役割を果たしているかを知ることが大切です。まずは、体のエネルギー消費と甲状腺ホルモンの関係から見ていきましょう。

甲状腺ホルモンが担う代謝調整の役割

甲状腺は首の前側にある小さな臓器で、T4(サイロキシン)やT3(トリヨードサイロニン)と呼ばれる甲状腺ホルモンをつくっています。

甲状腺ホルモンは、体がエネルギーを使う仕組みを調整するだけでなく、体温の維持や心臓、消化管、筋肉など、全身のさまざまな働きに関わっています。甲状腺ホルモンが不足すると全身の代謝が低下し、体の働きが全体的にゆっくりになります。

そのため、安静時に消費するエネルギーが少なくなるだけでなく、疲れやすい、寒さを感じやすい、便秘になりやすいといった変化が現れることがあります。体重増加も、こうした甲状腺ホルモン不足によって起こる変化の一つです。ただし、体重は食事や活動量など多くの要因で決まるため、甲状腺機能だけで体重変化のすべてを説明できるわけではありません。

自己免疫疾患の橋本病が代表的な原因

甲状腺機能低下症にはさまざまな原因があり、その代表的な原因の一つが、自己免疫疾患である橋本病(慢性甲状腺炎)です。橋本病では、免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンを十分につくれなくなることがあります。なお、橋本病があっても、甲状腺機能が正常に保たれている場合もあります。

ほかにも、甲状腺の手術や放射性ヨウ素治療、一部の薬剤、甲状腺炎、ヨウ素の過不足などが原因になることがあります。

甲状腺機能低下症で太る理由

甲状腺機能低下症で体重が増える背景には、主に代謝や活動量の低下によるエネルギー消費量の減少と、むくみによる水分の貯留が関係しています。

甲状腺機能低下症で太る理由の説明図
Geminiで生成した画像を元に作成

代謝や活動量の低下によるエネルギー消費減少

甲状腺ホルモンが不足すると全身の代謝が低下し、体内でエネルギーをつくり出す働きも低下します。そのため、疲れやすさやだるさなどが現れ、日常の活動量が減ることがあります。活動量が減ると、普段より消費するエネルギー量も少なくなり、体重増加につながることがあります。

むくみによる水分のたまりやすさ

甲状腺機能低下症では、塩分や水分が体にたまりやすくなり、体重が増えることがあります。顔が腫れぼったく見えたり、手足がむくんだりすることもあるため、「脂肪が増えた」と感じても、水分の貯留が体重増加に関わっている場合があります。こうした水分貯留は、甲状腺機能低下症による体重増加の特徴の一つです。

甲状腺機能低下症による体重増加の目安と特徴

甲状腺機能低下症では体重増加がみられることがありますが、その増え方には特徴があります。ここでは、体重がどの程度増えることが多いのか、また体重増加の内訳についてみていきます。

増加量は軽度から数キロ程度が目安

甲状腺機能低下症そのものによる体重増加は、一般にそれほど大きくないとされています。体重増加の程度に明確な基準があるわけではありませんが、米国甲状腺学会の患者向け情報では、多くの患者さんで甲状腺機能低下症に関連する体重増加は5~10ポンド(約2~5kg)程度と説明されています。

一方、潜在性甲状腺機能低下症など、甲状腺機能の低下が軽い場合には、体重にほとんど変化がみられないこともあります。

脂肪ではなくむくみが中心の体重増加

甲状腺機能低下症に関連して増える体重の多くは、体脂肪ではなく、塩分や水分が体内にたまることによるものとされています。甲状腺機能が低下すると、皮膚などの組織に水分がたまりやすくなり、むくみとして現れることがあります。そのため、体重が増えていても、そのすべてが体脂肪として増えているとは限りません。

太る以外に甲状腺機能低下症で見られる症状

甲状腺機能低下症では、体重増加のほか、次のような症状がみられることがあります。

  • 疲れやすい、だるい
  • 寒さを感じやすい
  • 便秘
  • 顔や手足のむくみ
  • 皮膚の乾燥
  • 髪が薄くなる、抜け毛が増える
  • 脈が遅くなる
  • 月経の変化
  • 筋力の低下や筋肉の痛み
  • 首まわりが太くなった、首の前側が腫れて見える

これらの症状は甲状腺機能低下症に特有のものではありませんが、体重増加に加えて、疲れやすさや寒がり、便秘、むくみなどの症状がいくつか重なっている場合は、甲状腺機能低下症の可能性も考えて医療機関に相談してみましょう。一方で、症状の現れ方には個人差があり、体重増加以外の症状が目立たない場合もあります。

甲状腺機能低下症が気になるときは

甲状腺機能低下症が気になる場合は、まず体重増加以外の症状がないか確認してみましょう。ただし、症状だけでは甲状腺機能低下症かどうかは判断できないため、診断には血液検査で甲状腺ホルモンなどの値を確認する必要があります。

症状のセルフチェックリスト

最近、次のような変化がないか、体調を振り返ってみましょう。

  • 食事量を大きく変えていないのに体重が増えた
  • 以前より疲れやすい、だるい
  • 周囲の人より寒さを感じやすい
  • 顔や手足がむくみやすい
  • 便秘が続いている
  • 皮膚が乾燥する、髪が薄くなった
  • 脈が遅いと感じる
  • 月経量や月経周期が変わった
  • 首が太くなった、首の前側に腫れがある

体重増加に加えて、こうした症状がいくつか続いている場合は、一度医療機関に相談し、必要に応じて甲状腺機能を調べてもらうとよいでしょう。

症状のセルフチェックリストの説明図
Geminiで生成した画像を元に作成

医療機関では血液検査で甲状腺機能を調べる

甲状腺機能は、主に血液中のTSH(甲状腺刺激ホルモン)と遊離T4(FT4)の値を確認します。橋本病など、甲状腺そのものの働きが低下するタイプ(原発性甲状腺機能低下症)では、TSHが高く、FT4が低くなるのが特徴です。また、橋本病が疑われる場合には、甲状腺の成分に反応する自己抗体があるかどうかを調べ、診断の参考にします。

甲状腺機能低下症の治療法と体重の変化

甲状腺機能低下症と診断された場合は、不足している甲状腺ホルモンを補い、甲状腺機能を適切な状態に戻すことが治療の基本です。治療後の体重変化には個人差があり、薬を飲めば必ず元の体重に戻るとは限りません。

甲状腺ホルモンを補う薬による治療

甲状腺機能低下症の標準的な治療には、甲状腺ホルモン製剤のレボチロキシンが用いられます。治療開始後は、血液検査でTSHなどの値を確認しながら、必要に応じて薬の量を調整します。体重を減らすために自己判断で薬の量を増やすことはせず、医師から指示された量を服用することが大切です。

治療後も体重が戻りきらないケース

治療によって甲状腺機能が整うと、余分な水分が抜けて体重が減ることがありますが、必ずしも発症前の体重まで戻るとは限りません。

原発性甲状腺機能低下症の成人101人を調べた研究では、52%の人で治療後に体重が減っていましたが、全体でみると治療前後で体重に明らかな変化はみられませんでした。

甲状腺機能が改善しても体重が戻りきらない場合は、食事や身体活動などの生活習慣も含めて体重管理を考えていきます。

甲状腺機能低下症の人が心がけたい生活習慣

生活習慣の見直しは体重管理に役立ちますが、甲状腺ホルモンの不足を食事や運動だけで治すことはできません。甲状腺機能低下症と診断された場合は、医師の指示に沿って治療を続け、そのうえで無理なく生活を整えていきましょう。

甲状腺機能低下症の人が心がけたい生活習慣の説明図
Geminiで生成した画像を元に作成

栄養バランスを意識した食事

極端な食事制限よりも、主食・主菜・副菜などを組み合わせ、必要な栄養素を過不足なくとることを意識しましょう。体重を減らす必要がある場合も、身体活動量に合わせて摂取エネルギーを調整することが基本です。食事量を大きく削る前に、間食や甘い飲み物、食事の量や内容を見直し、続けられる方法を選びましょう。

無理のない有酸素運動の実践

体重管理には、ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れることも大切です。ただし、甲状腺機能低下症では、疲れやすさや筋力の低下などがみられることがあるため、治療の状況や体調に合わせて無理のない範囲で体を動かしましょう。

特に症状が強い場合や治療を始めたばかりの場合は、運動の内容や量について医師に相談すると安心です。

ヨウ素の過剰摂取に注意

ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくるために必要な栄養素ですが、摂り過ぎると甲状腺の働きに影響することがあります。特に橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患がある人では、昆布を連日多量に食べたり、ヨウ素を多く含むサプリメントなどから過剰に摂取したりすると、甲状腺機能低下症を起こしたり悪化させたりすることがあります。

一方で、のりやわかめなども含め、ヨウ素を含む食品をすべて避ける必要があるわけではありません。ヨウ素を自己判断で極端に制限するのではなく、摂り過ぎが気になる場合は主治医に相談しましょう。

まとめ

甲状腺機能低下症では、代謝の低下や水分貯留などによって体重が増えることがあり、もし病気が関係している場合、その変化を「努力不足」だけで説明することはできません。

体重増加に加えて、疲れやすさ、むくみ、寒がり、便秘などが続く場合は、症状だけで判断せず血液検査で甲状腺機能を確認することが大切です。

血液検査で甲状腺機能に異常がない場合でも、体重増加にはほかの要因が関係していることがあります。肥満症として治療が必要な場合もあるため、体重増加が気になるときは、内科や肥満症外来に相談することも選択肢です。

気になる症状があるときは、かかりつけ医や内科、内分泌内科、甲状腺を専門とする医療機関などで相談し、必要な治療を受けたうえで体重管理を進めていきましょう。

参考資料

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監修

阪南中央病院 内科 主任部長

和田 昌幸 先生

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