「ストレスがたまると、つい食べ過ぎてしまう」「疲れていると甘いものが欲しくなる」と感じたことはありませんか。食べ過ぎた後に、自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
ストレスを受けたときには、心だけでなく体や行動にもさまざまな影響が現れます。食欲が変化したり、睡眠が乱れたりすることもあり、こうした変化が食事量や身体活動などに影響して、結果として体重増加につながる場合があります。
本記事では、ストレスと体重増加との関係や、ストレスが続いているときに振り返りたい生活習慣、食事・睡眠・運動の見直しポイントについて解説します。
- ストレスと体重増加との関係
- ストレスに伴う体や生活の変化
- 生活習慣の見直しポイント
ストレスで太るのは意志が弱いからではない
ストレスが続いていると、食べる量が増えたり、間食が多くなったり、生活リズムが乱れたりすることがあります。こうした変化を、単に「意志が弱い」「我慢が足りない」と捉えるのは適切ではありません。
ストレスを受けると、心理面だけでなく、身体面や行動面にもさまざまな反応が現れます。ストレス反応としてイライラや不安、不眠のほか、食欲にも変化がみられることがあります。
ストレスが強い時期に体重が増えてきた場合には、食事だけを見るのではなく、睡眠や身体活動、生活のリズムなども含めて振り返ってみることが大切です。
ストレスによって起こる4つの変化

ストレスに伴う体重増加は、一つの要因や一つの仕組みだけでは説明できません。ストレス反応そのものに加えて、食欲や睡眠、生活リズム、身体活動など、複数の要因が関わると考えられます。
ストレス反応に関わるホルモンの変化
ストレスを受けると、体内ではコルチゾールなど、ストレスへの対応に関わるホルモンが分泌されます。コルチゾールには、血糖値や血圧などを調節し、体がストレスに対応するのを助ける働きがあります。
ただし、ストレスと体重増加の関係は、ホルモンだけで説明できるものではありません。ストレスに伴って食事の取り方や睡眠、身体活動などが変化し、それらが重なって体重に影響する場合があります。
食欲や食事パターンの変化
ストレスは、食欲や食事パターンに影響することがあります。
ストレスが強い時期には、食べる量や間食の回数など、普段の食事の取り方が変わることがあります。このような変化によって摂取エネルギーが増えた状態が続くと、体重増加につながる場合があります。
「ストレスがあると必ず太る」というわけではありませんが、ストレスを感じている時期に食事の取り方が変わっていないかを振り返ることは、体重管理の手がかりになります。
睡眠の変化
ストレスが続くと、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりして、睡眠時間が短くなることがあります。睡眠不足は、食欲にも影響します。
食欲の調節には、いくつかのホルモンが関わっています。その代表が「レプチン」と「グレリン」です。レプチンは主に脂肪細胞から分泌され、脳に働きかけて食欲を抑える方向に作用します。一方、グレリンは主に胃から分泌され、食欲を高める方向に働きます。
睡眠不足が数日続くと、レプチンの分泌が減り、反対にグレリンの分泌が増えることが報告されています。そのため、十分に眠れているときと比べて食欲が強くなることがあります。
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生活リズムや身体活動の変化
忙しさや疲労が続くと、食事時間が不規則になったり、外出や運動の機会が減ったりすることがあります。
体重は、食事から取るエネルギーと身体活動などで消費するエネルギーのバランスにも影響されます。身体活動量が減った状態が続いたり、間食などによって摂取エネルギーが増えたりすると、体重増加につながることがあります。
「ストレス太り」が気になるときに振り返りたいこと
「ストレス太り」には医学的な診断基準があるわけではありません。ここで紹介する項目だけで体重増加の原因がストレスだと判断することはできませんが、生活を見直すきっかけとして役立つ可能性があります。
食事の取り方に変化はないか
ストレスが続いているときには、食事の取り方が以前と変わっていないか振り返ってみましょう。
例えば、
- 食べる量が増えていないか
- 間食の回数が増えていないか
- 食事の時間が不規則になっていないか
- 夜遅い時間に食べることが増えていないか
などを確認してみましょう。
体重や生活リズムに変化はないか
食事以外にも、体重や生活リズムに次のような変化がないか確認してみましょう。
- 最近、体重や腹囲が増えてきた
- 健康診断で血圧、血糖、脂質などについて指摘された
- 睡眠時間が短くなった
- 外出や体を動かす機会が減った
ストレスだけが体重増加の原因とは限りません。健康診断で異常を指摘された場合には、原因を自己判断せず、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
体重だけでなく腹囲や健康診断の結果にも目を向けよう
日本では、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が25以上の場合を「肥満」と判定します。肥満のうち、肥満に関連する健康障害がある場合や、内臓脂肪の蓄積がみられる場合などには「肥満症」と診断され、医学的な減量治療の対象になります。
ただし、体重やBMIだけで、健康への影響を全て判断することはできません。
同じBMIであっても、内臓の周囲に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」では、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などを伴いやすいことが知られています。
体重だけに注目するのではなく、腹囲や血圧、血糖、脂質など健康診断の結果もあわせて確認することが大切です。
また、BMIが普通体重の範囲でも体脂肪の割合が高い状態は、一般に「隠れ肥満」と呼ばれることがあります。「隠れ肥満」については「隠れ肥満とは?放置厳禁の健康リスクと脂肪を落とす対策を解説」で詳しく紹介しています。
ストレスが続くときに乱れやすい生活習慣
ストレスが強い時期には、食事だけでなく睡眠や生活リズムも乱れやすくなります。こうした変化が重なることで、体重管理が難しくなる場合があります。
睡眠不足
慢性的な睡眠不足は、レプチンやグレリンなど食欲に関係するホルモンや自律神経の働きなどに影響し、肥満や生活習慣病とも関連します。厚生労働省は、成人について、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することを示しています。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。単純に睡眠時間だけを見るのではなく、起きたときに休まった感覚があるか、日中に強い眠気がないかなども確認するとよいでしょう。
不規則な食事や生活リズム
ストレスや忙しさによって、食事を抜いたり、食事時間が日によって大きく変わったり、夜遅くに食べる機会が増えたりすることがあります。
生活リズムが乱れていると感じる場合には、食事の量だけでなく、食べる時間や間食の回数なども確認してみましょう。食事記録を付けると、「いつ、何を、どれくらい食べているか」を振り返るきっかけになります。
「ストレス太り」が気になるとき|食事・睡眠・運動の整え方
ストレスによる体重増加が気になる場合でも、食事を極端に減らしたり、無理な運動を始めたりする必要はありません。食事だけに注目するのではなく、睡眠や身体活動なども含め、続けやすいところから生活習慣を見直していきましょう。

食事のリズムや内容を整える
体重が気になると、「食べる量をできるだけ減らそう」と考えてしまうかもしれません。しかし、特定の食品を抜いたり、極端に食事量を減らしたりする方法は避けた方がよいでしょう。
主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本に、食材や調理法、菓子やアルコールなどの取り方を見直すことが大切です。
例えば、次のような点から振り返ってみましょう。
- 食事を抜くことが続いていないか確認する
- 主食・主菜・副菜を組み合わせる
- 野菜、海藻、きのこなども食事に取り入れる
- 急いで食べず、よく噛んで食べる
- 間食の量や回数を確認する
- アルコールの量や外食の頻度がふえていないか確認する。
全てを一度に変える必要はありません。まずはできそうなことを一つ選び、続けることから始めましょう。
睡眠のリズムを一定に整える
睡眠は食欲や生活習慣とも関係しています。食生活や運動、寝室環境などを見直して、睡眠による休養感を高めることも重要です。
睡眠を整えるためには、
- 必要な睡眠時間を確保する
- 朝は日光を浴びる
- 日中は適度に体を動かす
- 寝る前のスマホやタブレットの視聴を避ける
- カフェインや飲酒が睡眠に影響していないか確認する
など、日々の過ごし方を振り返ってみましょう。
眠れない状態や、睡眠を取っても休まった感じがしない状態が続く場合には、病気が隠れていることもあるため、医療機関への相談も検討しましょう。
無理のない範囲で体を動かす
体重管理では、食事とともに身体活動も大切です。適度な運動は、より良好な睡眠を促すこともわかっています。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、個人差を踏まえて運動の強度や量を調整し、「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことが基本とされています。ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも推奨されています。
例えば、
- 通勤や買い物で歩く時間を増やす
- 座りっぱなしの時間を減らす
- 階段を利用する
- ウォーキングなど続けやすい運動を取り入れる
- 無理のない範囲で筋力トレーニングを行う
などがあります。
運動習慣がなかった人が、急に負荷の高い運動を始める必要はありません。年齢や体力、持病などに応じて、できる範囲から始めましょう。
食べる以外のストレス発散法を見つける
ストレスを感じるたびに何かを食べることが習慣になっている場合には、食事以外にも気分転換できる方法をいくつか持っておくとよいでしょう。
どの方法が合うかは人によって異なりますが、例えば、
- 散歩をする
- 音楽を聴く
- 入浴する
- 趣味の時間をつくる
- 家族や友人と話す
- 気持ちを書き出す
などがあります。
必要に応じて医療機関へ相談を
体重増加にはさまざまな原因があります。生活習慣を見直しても体重増加が続く場合や、食べることを自分でコントロールするのが難しい状態が続く場合には、一人で判断せず、医療機関に相談しましょう。
相談のタイミング
体重の増加だけでなく、以下のような変化がある場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
- 健康診断で血圧、血糖、脂質などの異常を指摘された
- 体重や腹囲の増加が続いている
- 強い口の渇きや尿の回数の増加など、これまでになかった症状がある
- むくみや息切れなどの体調変化がある
健康診断の血圧・血糖・脂質などの数値には、それぞれ診断基準や保健指導の基準などがあります。一つの数値だけで病気と判断できるとは限りません。健診で受診を勧められた場合には、その指示に従ってください。
肥満に関連する病気については「肥満と関連する病気一覧|リスクが高まる疾患と初期症状・予防法を徹底解説」の記事にまとめられています。
相談先の選び方
体重増加や腹囲の増加、健康診断での血糖・血圧・脂質の異常などが気になる場合には、まず内科やかかりつけ医に相談するとよいでしょう。肥満症を専門的に診療する肥満症外来や糖尿病内科などで相談できる場合もあります。
強い不安や気分の落ち込み、不眠などが続いている場合には、心療内科や精神科も相談先になります。
どの診療科が適しているかわからない場合には、まずかかりつけ医で相談してみましょう。
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肥満症とは?「太っている」と「病気」の境界線と治療の必要性
まとめ
ストレスが続くと、食欲や食事の取り方、睡眠、生活リズム、身体活動などが変化し、結果として体重増加につながることがあります。ただし、ストレスに対する反応には個人差があり、ストレスがあれば必ず太るわけではありません。
体重が気になるときには、食事だけを厳しく制限するのではなく、食事のリズムや睡眠、身体活動など、生活全体を振り返ることが大切です。
全てを一度に変える必要はありません。「間食が増えていないか確認する」「睡眠時間を確保する」「今より少し歩く」など、取り組みやすいことから始めてみましょう。
参考資料
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康」「肥満と肥満症」「メタボリックシンドロームの診断基準」「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」「睡眠と生活習慣病との深い関係」
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- 米国国立医学図書館(NLM)「Yau YH and Potenza MN. Stress and eating behaviors.Minerva Endocrinol. 2013;38(3):255-67.」「Lengton R et al.Glucocorticoids and HPA axis regulation in the stress-obesity connection: A comprehensive overview of biological, physiological and behavioural dimensions.Clin Obes. 2025;15(2):e12725.」
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監修
奥田 英伸 先生