- 肥満と肥満症の医学的な違い
- 肥満症の診断基準と11の健康障害
- 減量治療が必要な理由と悪循環の断ち切り
「体重が多いだけで、病気になるの?」そんな疑問を持ったことはありませんか。
実は医学的には、単に体重が多い状態の「肥満」と、健康に悪影響を及ぼし治療が必要とされる「肥満症」は区別されています。では、その違いはどこにあるのでしょうか。また、どのような場合に治療が必要になるのでしょうか。この記事では、厚生労働省の情報や日本肥満学会のガイドラインをもとに、肥満症の定義や診断の考え方、治療の必要性についてわかりやすく解説します。
1. 肥満と肥満症の定義:医学的な違いとは

まず理解しておくべきは、「肥満」は体の状態を指す言葉であり、「肥満症」は治療の対象となる病気(疾患名)であるという点です。
1-1. 肥満(Obesity)の基準
日本では、肥満かどうかを判定するために、BMI(Body Mass Index:体格指数)という指標が用いられます。BMIは、身長と体重から体格の程度を数値で示すものです。
BMIは「体重(kg)÷身長(m)²」で計算され、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満と判定されます。
ただし、BMIはあくまで体格の目安であり、この数値だけで直ちに「病気」と診断されるわけではありません。
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1-2. 肥満症(Obesity Disease)の診断
一方で「肥満症」は、医学的に減量治療が必要とされる「疾患」です。
脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で, BMI≧25のものを肥満と定義し, ひまんがあり, 肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか, その合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態を肥満症の定義とする
引用:日本肥満学会編「肥満症診療ガイドライン2022」第1章 1 肥満症の概念と診断・治療
つまり、単に体重が多いだけではなく、肥満によってすでに健康障害が起きている、あるいは将来的に重い病気につながるリスクが高く、医学的に減量が必要と判断される状態を指します。
このように、肥満はあくまで体格の状態を示す言葉であるのに対し、肥満症は治療の対象となる病気として区別されています。
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2. 肥満症の診断基準:11の健康障害と内臓脂肪
肥満症は、単にBMIが25以上であるだけでなく、健康への影響の有無によって診断されます。具体的には、BMI25以上に加えて、以下のいずれかに該当する場合に肥満症と診断されます。
2-1. 肥満に起因する11の健康障害
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、以下の11種類の健康障害が、肥満に起因または関連するものとして挙げられています。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症・脊椎症など)
- 肥満関連腎臓病
これらの障害が一つでもあり、減量によって改善が見込まれる場合、肥満症と診断されます。
さらにこれらの障害はバラバラに存在しているのではなく、互いに悪影響を及ぼし合います。例えば、「睡眠時無呼吸症候群」は夜間の低酸素状態を引き起こし、それが「高血圧」や「耐糖能障害」を悪化させるという負の連鎖を生んでいきます。
2-2. 内臓脂肪型肥満の重要性
一方で、これらの健康障害が現れていない場合でも、内臓脂肪の蓄積が著しい場合には注意が必要です。
日本肥満学会では、「ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査などによって内臓脂肪面積≧100cm2が測定されれば、内臓脂肪型肥満と診断する」としている。
引用:厚生労働省 eヘルスネット「内臓脂肪型肥満」
「内臓脂肪型肥満」は、将来的に糖尿病や高血圧などの生活習慣病を発症するリスクが高い状態です。そのため、現時点で明らかな合併症がなくても、医学的な管理や生活習慣の改善が重要と考えられています。
3. なぜ治療が必要なのか:肥満症がもたらすリスク

肥満症は、単に体重が多い状態ではなく、さまざまな健康リスクを伴う疾患です。特にBMIが35以上になると「高度肥満症」とされ、より積極的な治療が必要と考えられています。
3-1. 合併症の重症化
肥満の状態が続くと、前述した糖尿病や高血圧、脂質異常症などの健康障害が進行しやすくなります。
さらに高度肥満になると、心不全や重度の呼吸障害など、日常生活に大きな影響を及ぼす合併症を引き起こすリスクも高まります。
これは単なる「見た目」の問題ではなく、健康状態の悪化や寿命にも関わる重要な問題です。
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3-2. 悪循環の遮断
体重が増えることで膝や腰に負担がかかり、痛みのために体を動かす機会が減ってしまうことがあります。
すると消費エネルギーが低下し、さらに体重が増えるという悪循環に陥りやすくなります。
医療機関での治療やサポートは、このような悪循環を断ち切り、無理のない形で体重管理を進めていくために重要です。これは、将来の健康リスクを減らし、健康寿命を延ばすことにもつながります。
<監修医からのメッセージ>
産業医の現場でも、肥満に伴う睡眠の質の低下が日中の集中力欠如を招き、仕事のパフォーマンスや安全性に影響するケースを多く目にします。治療は「病気を治す」だけでなく、「元気に働き続けるための投資」でもあります。
4. 肥満症治療の基本アプローチ

肥満症の治療は、単に体重を減らすことだけを目的とするものではありません。肥満に伴う健康障害を改善し、将来的な病気のリスクを減らすこと、そして健康的な生活を取り戻すことが重要な目標となります。
4-1. ライフスタイルの改善(食事・運動療法)
肥満症の治療の基本は、食事療法と運動療法による減量です。医師や管理栄養士の指導のもと、無理のない範囲で生活習慣を見直していきます。
ただし、目標は単にBMIを下げることではなく、内臓脂肪を減らし、肥満に伴う健康障害を予防・改善することにあります。
肥満症治療では, 減量は治療の目的ではなく手段であることを意識し, 治療の全過程にわたって, 体重やウエスト周囲長の変化だけでなく, 健康障害の改善状況について評価することが重要である。
引用:日本肥満学会編「肥満症診療ガイドライン2022」第1章 1 肥満症の概念と診断・治療
極端な絶食や特定の食品のみを摂取するダイエットは筋肉量(除脂肪体重)を減少させ、かえって基礎代謝を下げてしまいます。また「適切なタンパク質を維持しながら脂肪を燃やす」質の高い栄養管理がリバウンドを防ぐ鍵となります。
つまり、極端な食事制限ではなく、栄養バランスの取れた食事と、筋肉量を維持するための適度な運動を継続することが大切です。
4-2. 薬物療法と外科的治療
生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合には、専門医の判断により薬物療法などが検討されます。
食事, 運動, 行動療法を行ったうえで減量目標が未達成の場合, 肥満症治療食の強化や薬物療法, 外科療法の導入を考慮する。
引用:日本肥満学会編「肥満症診療ガイドライン2022」第1章 1 肥満症の概念と診断・治療
これらの治療はすべて、専門の医療機関において適切な評価と管理のもとで行われます。
5. 専門外来の受診を勧める理由
肥満は長らく「自己責任」や「意志の弱さ」として捉えられることもありましたが、現在では、遺伝的要因や生活環境、ホルモンバランスなどが複雑に関与する「多因子疾患」と考えられています。
そのため、「なかなか体重が減らない」「何度もリバウンドしてしまう」といった悩みも、個人の努力だけでは解決が難しい場合があります。
ご自身の状態が「肥満」なのか、それとも治療が必要な「肥満症」なのかを正確に判断し、医学的根拠に基づいた適切な治療を受けるためには、専門の医療機関(肥満症外来や糖尿病内科など)への相談が重要です。肥満症の治療は、決してあなたを否定するものではありません。医学的なサポートを利用する事は未来の自分への最高の投資です。
早い段階で適切なサポートを受けることが、将来の健康リスクを減らし、無理のない形で健康的な体重管理を続けていくことにつながります。まずは健康診断の結果を手に、お近くの専門医療機関の門を叩いてみて下さい。
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参考資料
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」「肥満と肥満症」「内臓脂肪型肥満」
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監修
高橋 邦雄 先生