肥満の裏にホルモンの病気が隠れていることがある
肥満の裏に病気が隠れている場合というのは、それほど多くはありません。しかし、我々医師が気づいていないことがあると思います。
よくある例は甲状腺機能低下症と肥満との関連です。この場合、かなりの確率で甲状腺の腫大があったり、倦怠感、浮腫があったりと、肥満とは何か別の症状があり、細かく問診すれば判明することがあるものですが、何も訴えがない場合もあります。
他のホルモンの場合でも、あまり肥満以外の症状が出ない場合があります。
20代女性、治療しても肥満や糖尿病・高血圧が改善しない
10年以上前の話ですが、当時20代の女性の紹介がありました。整形外科だったと思いますが、術前検査を受けたところ、血圧が高値であったため内科で治療してほしいとのことでした。
診察時の血圧が206/102mmHgだったとのことで、まだ若いのに変だな、と思いつつ処方を開始しました。このときの患者さんの身長が159㎝、体重が77㎏、BMI(体格指数)が30.5でした。BMIは「体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)」の計算式から算出され、日本肥満学会ではBMI25以上を肥満と定義しています。
その次の診察で、HbA1c7.8%も判明し、血糖値も含めて糖尿病と診断できたため、これに対しても投薬を開始しました。しかし、肥満以外の症状や身体所見はありませんでした。
実はその後、降圧薬、経口糖尿病薬を処方しても、血糖、血圧ともにあまり下がりませんでした。複数の薬剤を使用してもHbA1c7%以下にはならず、血圧も140/90mmHg以上である状態が続いていました。また、体重に関しても3㎏減少した後、そのままの経過となっていました。
ホルモンの検査で判明した「クッシング症候群」
そこで、他のホルモンを調べてみたところ、副腎皮質ホルモンが多量に分泌されており、副腎皮質ホルモン刺激ホルモン(ACTH:副腎皮質ホルモンを作るように刺激するホルモン)も感度以下、ほぼ検出されない状態になっていました。
CT検査などで副腎を調べると腫大しており、かつ負荷試験といって薬剤を用いたテストを行うと、最終的には「クッシング症候群」という病気であることがわかりました。
ホルモン異常があるとなぜ一般的なダイエットで体重が減少しにくいか
この病気はいろいろなパターンがありますが、上記患者さんの場合は「副腎」といわれる部分が腫大して、過剰な副腎皮質ホルモンを作っているということがわかりました。この患者さんは、肥満以外の自覚症状がなく、現在「サブクリニカルクッシング症候群」といわれる分類に入ると考えられました。
副腎皮質ホルモンは血糖を上昇させる効果があり、その影響で血糖が上昇するとインスリンが多く分泌されるようになります。ここから、脂肪の沈着が起こり、体重が増加、かつ副腎皮質ホルモンでタンパク質の分解が起こるため、筋肉量が減って基礎代謝が減少します。以上のことから、肥満を発症しやすくなります。
上記患者さんも、肥満を改善できなかった原因は副腎皮質ホルモンにあると考えられました。
患者さんの気づきが治療を見直すきっかけになることも
肥満の裏に病気が隠れていない場合でも、ある程度減量が進むと、その後、体重が横ばいになる時期があります。その時期に、ひょっとすると病気が隠れているかもしれないと医師自身が想定することができるかが問題となります。
恥ずかしい話ですが、上記症例の患者さんの場合、私はまさかクッシング症候群ではないだろうと思い込んでしまい、精査、治療の開始が遅れてしまっていました。このような症例は少ないのかもしれませんが、自覚症状がなくても、何か理由があって肥満が解消されないという例はあるということを痛感させられました。
患者さんの側で、肥満と言われた場合でも生活習慣を含めたさまざまな理由があることを理解しておいていただくと、痩せにくい、体重がうまく減少しないときに、自分の場合は何か裏の病気があるのではと考え直すことができ、医師に検査結果を尋ねるきっかけにすることができると思います。
プロフィール
和田 昌幸 先生
1999年島根医科大学卒業、島根医科大学附属病院、公立雲南総合病院、町立奥出雲病院勤務を経て、2022年より現職、日本内科学会認定総合内科専門医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、指導医、日本病態栄養学会認定病態栄養専門医、指導医、日本栄養治療学会認定医。