- 内臓脂肪の蓄積と健康被害の仕組み
- 正しい測定方法と数値の評価基準
- 脂肪を効率よく減らす食事と運動法
「最近おなかが出てきた」「健康診断で内臓脂肪を指摘された」と悩む人は少なくありません。体組成計に表示される「内臓脂肪レベル」は、私たちの体内状況を映し出す重要な指標です。しかし、その数値が何を意味し、どう改善すべきかを正しく理解している人は意外と少ないものです。
本記事では、内臓脂肪の基礎知識から、家庭用体組成計の賢い使い方、そして科学的根拠に基づいた具体的な改善策までを詳しく解説します。
1. 内臓脂肪レベルとは?
まずは内臓脂肪がどのようなものか、整理しましょう。
1-1. 内臓脂肪の定義と役割

脂肪には大きく分けて「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。皮下脂肪が皮膚のすぐ下に蓄積し、指でつまむことができるのに対し、内臓脂肪は腹筋の内側、胃や腸などの臓器の周りに蓄積します。
内臓脂肪は、ただの「余ったエネルギー」ではありません。実は、以下の重要な役割を担っています。
- 臓器の保護:外部からの衝撃を吸収し、内臓が正しい位置に留まるようクッションの役割を果たします。
- エネルギー供給:飢餓状態に陥った際、皮下脂肪よりも先に分解され、素早くエネルギーとして利用されます。
しかし、現代の飽食と運動不足の生活では、この「貯蔵」が過剰になりやすく、健康を脅かす要因となってしまいます。
内臓脂肪は、皮下脂肪と比べて代謝(エネルギーの蓄積と燃焼)が非常に活発なため、生活習慣が乱れるとすぐに増えますが、逆に努力の結果が数値に現れやすいというメリットもあります。まずは「落としやすい脂肪なんだ」と前向きに捉えることが改善の第一歩です。
1-2. 内臓脂肪と男女の違い
ひと口に「内臓脂肪」といっても、男性と女性では以下のような違いがあります。
- 男性: 男性ホルモンの影響により、女性よりも内臓脂肪が蓄積しやすい傾向があります。若いうちから数値が高くなりやすいため、早めの対策が求められます。
- 女性: 女性ホルモン(エストロゲン)には脂肪を皮下へ回す働きがあるため、閉経前までは数値が低く抑えられる傾向にあります。しかし、閉経後はホルモン分泌の低下により、急激に内臓脂肪が増えやすくなるため注意が必要です。
2. 内臓脂肪レベルはどう評価するか?
次に、どうやって内臓脂肪レベルを把握するか、具体的な方法をみていきましょう。
2-1. 内臓脂肪レベルの測定方法
内臓脂肪レベル(蓄積量)を測定・評価する方法には、目的や精度に応じて主に以下の4つの方法があります。
- 腹部CT検査(確定診断・最も正確な標準法):内臓脂肪の蓄積を正確に評価・診断するための「ゴールドスタンダード(標準的)」な検査方法です。へその高さで腹部の断面画像(CTスキャン)を撮影し、内臓脂肪の面積を正確に計算します。
- ウエスト周囲長(腹囲)の測定(簡便なスクリーニング):特定健診(メタボ健診)などで最も広く用いられている、簡便に内臓脂肪の蓄積を疑うための方法です。立った姿勢で、軽く息を吐いた状態のへその高さで測定します。
- 生体電気インピーダンス(BIA)法を用いた機器:家庭用の体組成計などにも広く利用されている技術で、体に微弱な電流を流し、電気を通しにくい脂肪組織の特性(電気抵抗)を利用して脂肪量を推定する方法です。
- MRI検査:CT検査と同様に、腹部の断面画像から内臓脂肪の面積や体積を正確に算出できる画像検査です。CT検査と異なり、放射線被曝の問題がないという利点があります。
2-2. 日常生活での内臓脂肪モニタリング
日常生活で内臓脂肪レベルを把握する方法としては、腹囲測定や家庭用の体組成計が一般的です。
特に体組成計は手軽なモニタリング法として活用されていますが、ここで知っておくべきは、電流自体が内臓脂肪と皮下脂肪を直接区別して測っているわけではないという点です。
体組成計メーカーは、多くのCTスキャンの実測データを元に、測定された電気抵抗値、さらに身長・体重・年齢・性別・腹囲などのデータを組み合わせ、独自のアルゴリズムによって内臓脂肪の量を「レベル」として推定・算出しています。
BIA法は体内の水分量に大きく左右されます。夕方のむくみ、飲酒後、入浴直後、食後すぐなどは、正確な数値が出にくい傾向があります。毎日「起床後、トイレを済ませた後、朝食を食べる前」といった具合に条件を固定することで、数値のブレを最小限に抑え、正確なトレンドを把握できます。
3. 内臓脂肪レベルの基準
内臓脂肪レベルが「適正値」を超えると、さまざまな健康障害のリスクが高まります。
具体的には、以下の数値が適正な状態の目安とされます。
- 内臓脂肪面積の適正値:100 cm2未満 (腹部CT検査などで測定した場合)
- ウエスト周囲長(腹囲)の適正値:男性85cm未満、女性90cm未満 (立った姿勢でへその高さで測定した場合)
体重を身長の二乗で割った「BMI」が25未満の標準体型であっても、内臓脂肪レベルが高いケースがあります。これがいわゆる「隠れ肥満」です。特に「若い頃から体重は変わっていないがお腹だけ出てきた」という人は、筋肉が落ちて内臓脂肪に入れ替わっている可能性があります。
家庭用体組成計の数値はあくまで推定値であるため、1回ごとの絶対的な数値に一喜一憂するのではなく、長期的な変化の推移を見るのが最も賢い使い方です。体組成計の画面に表示される数値の見方は、各メーカーの資料を確認してください。
4. 内臓脂肪が健康に与える影響
なぜ、内臓脂肪はこれほどまでに問題視されるのでしょうか。それは、内臓脂肪が単なる「重り」ではなく、血液を介して全身に悪影響を及ぼす「生理活性物質の分泌工場」だからです。

4-1. 内臓脂肪と生活習慣病の関係
内臓脂肪が蓄積しすぎると、脂肪細胞から「アディポサイトカイン(アディポカイン)」と呼ばれる生理活性物質の分泌に異常が生じます。
内臓脂肪が蓄積すると、血管を修復し、血糖値を下げるインスリンの働きを助ける物質(アディポネクチン)が減ってしまいます。一方、血圧を上げたり、インスリンの働きを邪魔したりする物質は増加します。
このアンバランスが「高血圧」「高血糖」「脂質異常」を引き起こし、メタボリックシンドロームのリスクを増加させます。
4-2. 内臓脂肪が引き起こすリスク
放置された内臓脂肪は、「サイレントキラー」として血管を傷め続けます。ダメージが蓄積すると血管は硬く、脆くなり、プラークが詰まりやすくなります。この状態が「動脈硬化」であり、結果として心筋梗塞や狭心症など、命に関わる疾患(心血管疾患)のリスクが高まります。また、脳梗塞や脳出血が引き起こされると、重大な後遺症を残す可能性があります。
5. 内臓脂肪を減らす方法
「内臓脂肪は落としやすい」と前述した通り、正しいアプローチを行えば数値は必ず応えてくれます。
5-1. 食事の見直しと栄養管理
内臓脂肪を減らす鍵は、適正なカロリー管理と血糖値のコントロールにあります。
- 糖質摂取のポイント:過度の糖質制限は筋肉量の低下につながるため、自分の活動量に見合った量を摂取することが大切です。ただし、ジュースやお菓子などに含まれる砂糖は、肥満や糖尿病のリスクを高めるため、取り過ぎには注意しましょう。
- 脂質を取りすぎない:1gあたりのカロリーは糖質4kcalに対し、脂質は9kcalです。脂質は重要なエネルギー源ですが、取りすぎは健康に悪影響を及ぼします。特に、肉などの動物性脂肪やパーム油に多く含まれる「飽和脂肪酸」の摂取量は、心筋梗塞や脂質異常症のリスクとの関連が指摘されています。
- ベジタブルファースト:野菜、海藻、きのこなど、食物繊維を食事の最初に取りましょう。糖の吸収を緩やかにし、インスリンの過剰分泌を抑える効果が期待できます。
- タンパク質をしっかり:筋肉の材料となるタンパク質を摂取し、基礎代謝の低下を防ぎます。
- お酒にも注意:お酒(アルコール)は、1gあたり約7kcalと、それ自体がとてもカロリーの高い飲み物です。また、体内にお酒が入ってくると、肝臓は生体にとって有害なアルコールの分解を優先します。このため、糖質や脂質の代謝は後回しになり、脂肪として蓄積されるようになります。
5-2. 運動習慣の確立
内臓脂肪は、体内のエネルギー不足を補うために真っ先に使われる脂肪です。
- 有酸素運動:ウォーキング、サイクリング、水泳など。1日合計30分を目指しましょう。10分×3回でも効果があります。
- 筋力トレーニング:特にスクワットなどの大きな筋肉を鍛える種目がおすすめです。基礎代謝量(骨格筋率)がアップし、太りにくい体が手に入ります。
エレベーターを使わず階段を上る、テレビを見ながらスクワット10回といった、日常の活動量を増やすやり方も、長期的には大きな成果をもたらします。
6. まとめ:未来の自分を守るための第一歩
内臓脂肪レベルは、あなたのライフスタイルの成績表です。数値が高いことは決して恥ずべきことではなく、将来の大きな病気を防ぐための「今のうちに気づけて良かった」という体からのメッセージです。
家庭用の体組成計などを賢く活用し、日々の小さな変化を楽しみながら、食事と運動を自分のできる範囲で調整していきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「e-ヘルスネット 肥満と健康」「e-ヘルスネット アルコールとメタボリックシンドローム」「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
- 農林水産省「脂質による健康影響」
- 一般社団法人 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
- MDPI 「Alser M and Elrayess MA. From an Apple to a Pear: Moving Fat around for Reversing Insulin Resistance. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(21):14251.」
監修
奥田 英伸 先生