- 市民公開講座「肥満症を正しく知り、健康な未来をはじめよう!」
- 「肥満症」とは何か?医師がわかりやすく解説
- 食事・運動で気を付けるポイントも紹介
「第47回日本肥満学会・第44回日本肥満症治療学会学術集会」が2026年10月3日(土)~4日(日)に開催されました。10月4日(日)には、日本肥満症予防協会との共催で市民公開講座「肥満症を正しく知り、健康な未来をはじめよう!」が開催されました。

開会に先立ち、日本肥満症予防協会理事長・結核予防会総合健診推進センター所長の宮崎滋先生よりご挨拶が行われました。宮崎先生は、社会的な課題である「肥満に関するスティグマ」に触れました。スティグマとは、もともと「烙印(らくいん)」を意味する言葉です。ここでは、病気などに対する社会や周囲の人が持つ差別や偏見を表しています。
肥満症は、環境要因だけでなく遺伝要因も関わってくると考えられており、「自己管理ができないから」「意志が弱いから」といった考え方は、正しいとは言えません。このようなスティグマをなくすために、正しい知識を持つことが大切です。今回の市民公開講座では、医師、管理栄養士、理学療法士といった専門家の先生方がわかりやすく解説してくださいましたので、本記事では、その内容をレポートします。
第1講演:肥満症は万病のもと!知っておきたい対策と治療
第1講演では、獨協医科大学病院 病院長の麻生好正先生が登壇し、「肥満症は万病のもと!知っておきたい対策と治療 ~脂肪をしぼ(う)りましょう~」と題した講演を行いました。

「肥満症」とは、治療が必要とされる「疾患」です。BMI(体格指数)が25以上であり、かつ肥満に関連する11種類の健康障害(高血圧、脂質異常症など)を1つ以上合併している、または、内臓脂肪型肥満で、医学的に減量を必要とする病態のことです。治療の基本は、食事療法、運動療法、行動療法です。患者さんの状態に応じて、薬物療法や手術なども検討されます。
麻生先生は、肥満症になる前に予防することの大切さについて、解説されました。
会場となった栃木県は、自家用車の保有台数が全国有数の車社会だそうです。近くのコンビニへも車で行くなど、日常生活で歩く機会が少なくなりやすい環境について紹介されました。
さらに、美味しい食べ物が多いことも特徴の一つです。麻生先生は「とちぎ和牛」がお好きだそうで、これにガーリックライスやワインも加わると、摂取エネルギーがどんどん増えていくといいます。こうした例を挙げながら、「まずは、自分の食べている物のカロリーを知りましょう」と呼びかけました。
そして、運動については歩数にも触れ、「無料のスマホアプリなどの万歩計で、一日何歩歩いているのかを調べるのも一つかもしれません」と紹介されました。
肥満症の定義など専門的な内容も解説されたご講演でしたが、麻生先生はユーモアを交えながらわかりやすく解説され、会場ではたびたび笑い声が上がりました。肥満症の基本をしっかり押さえた上で、次の講演へと続きます。
第2講演:無理なく続けるダイエットのコツ
第2講演では、獨協医科大学病院 栄養部 課長・管理栄養士、栃木県栄養士会会長の齊藤克枝先生より「無理なく続けるダイエットのコツ」と題した講演が行われました。

食事療法では、単に食べる量を減らすのではなく、必要な栄養素をバランスよく取ることが大切です。齊藤先生は、リバウンドを防ぎ、無理なく減量を続けるためのポイントとして、以下を挙げました。
- ゆっくり痩せる
- 極端な制限を避ける
- 栄養バランスを整える
- 良質なタンパク質をしっかり摂る
- 食べ方・時間を意識する
- 運動を習慣にする
ゆっくり痩せる目安としては、3~6か月かけて、BMIが25以上35未満の方では現在の体重の3%以上、BMIが35以上の方では5~10%の減量を目指すことが紹介されました。極端な制限を避けることについては、栄養素のバランスを意識することが大切です。
摂取エネルギーに占める割合は、炭水化物50~60%、タンパク質13~20%、脂質20~25%が目安として紹介されました。そして、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物などを取り入れて栄養バランスを整えることも大切です。
さらに、食べ方・時間を意識するポイントもあります。ごはんは白米より玄米や雑穀入り、パンは胚芽入りがおすすめだそうです。食べる順番は、野菜やきのこのおかず→肉や魚のおかず→ご飯やパンなどの主食、という順番が紹介されました。
また、朝食は起床後できるだけ早く、夕食は就寝4時間前(少なくとも2時間前)までに取ることが目安として挙げられました。1日3食欠食しないこと、特に朝食を取ることが大切だと齊藤先生。仕事などでどうしても夕食が遅くなりそうなときは、食事を分ける「分食」を活用する方法も紹介されました。
例えば、19時ごろまでに主食(ご飯、パン、いも類など)を取り、21時以降に主菜(魚・肉・大豆製品など)や副菜(野菜・海藻・きのこ類など)を取るといった方法です。なお、分食する場合も、食事全体の量には注意が必要です。
運動については、第3講演に続きます。
第3講演:運動と栄養の相乗効果で身体はどう変わるのか
第3講演では、獨協医科大学日光医療センター 理学療法士の高橋もも先生が「運動と栄養の相乗効果で身体はどう変わるのか」と題して講演を行いました。

減量では単に体重を落とすだけでなく、「筋肉を守りながら脂肪を減らすこと」が重要です。運動習慣のない方でも急にジム通いを始める必要はなく、日常の身体活動量を増やすことを意識してみましょう。例えば、エスカレーターではなく階段を利用する、駐車場であえて車を遠くに停めるといった工夫が考えられます。
また、その場ですぐにできるスクワットなども紹介され、会場の皆さんで実際にスクワットに取り組む場面もありました。
目安としては、成人は1日8,000歩、筋トレ週2〜3回としつつも、「大切なのは、0か100かではありません」と、高橋先生。例えば、10分でも歩いてみるなどできることから意識することが大切だとお話しになりました。膝や腰に痛みがある場合には、水中運動や座ってできる運動など、無理なく取り組める方法を選ぶことも紹介されました。30分以上の座りっぱなしを防ぐことも大切だそうです。
そして、運動に加えて、筋肉の材料となるタンパク質を毎食適切に摂取することで運動と栄養の相乗効果が期待され、動きやすい体づくりにつながるとのことでした。
第4講演:不規則な食事が肥満症に与える影響
第4講演では、日本肥満症予防協会執行理事の佐野喜子先生より「不規則な食事が肥満症に与える影響」と題した発表が行われました。

不規則な食事は、肥満症のリスクに関わる生活習慣の一つとされています。私たちの体には「体内時計」が備わっており、食事の時間帯は体内の代謝にも関係すると考えられています。
食生活で気をつけたい習慣の1つ目は「夜遅い食事」です。佐野先生は、食事が夜遅くなるときのポイントとして、以下を挙げました。
- 消化の良い食品を選ぶ:揚げ物などを避ける
- 野菜料理を食べる:不足しがちな野菜を意識する
- 高カロリーな間食や飲酒を避ける:間食は日中に取り、食べる量にも注意する
- よく噛んで食べる:食べ過ぎ防止につながる
食生活で気をつけたい習慣の2つ目は「朝食の欠食」です。朝食を抜くと、その後の食事で血糖値が上がりやすくなる場合があります。
血糖値の調節には、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが関わっています。インスリンには、血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用できるようにするほか、余ったブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪として蓄える働きもあります。
佐野先生は、まずは朝食を取る習慣をつけ、少しずつタンパク質や野菜なども取り入れることを勧めました。
(編集後記)
閉会の挨拶では、第47回日本肥満学会学会長の津下一代先生(日本栄養大学教授、日本肥満症予防協会 副理事長)が、会場の参加者に向けて、講座で得た情報を家族や友人など身近な人に伝えてほしいと呼びかけました。肥満症への理解を深め、正しい情報を身近な人と共有すること、そして、日々の生活の中で無理なくできることから取り組むことが、健康づくりの第一歩となるのではないでしょうか。(ひまんラボ編集部)
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