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発達特性と肥満:食行動の背景にある「特性」を理解する

はじめに

神経発達症(自閉スペクトラム症ASDや注意欠如多動症ADHDなど)の子どもでは、一般の子どもより肥満や体重増加が起こりやすいことが世界の大規模な調査で報告されています。ただし、すべての子どもが太るわけではなく、体重が増える背景には複数の要因が重なっています。重要なのは、これは単なる「食べ過ぎ」や「しつけの不足」では説明できないという点です。特性と環境の相互作用として理解し、本人と家族が無理なく続けられる支援を行うことが必要です。

発達特性のある子どもに肥満が多い理由

まず、食行動そのものに神経発達症の特性が影響しています。

ADHDでは衝動性が強く、「目の前にあると食べてしまう」「空腹ではないのに間食が止まらない」「待てない」といった形で過食につながりやすいことがあります。

一方、ASDではこだわりが強く、「同じものしか食べない」「決まった食べ方でないと受け付けない」「新しい食品を拒否する」といった偏食が目立ちます。これらはわがままではなく、本人にとっては不安を下げるための行動であり、急に変えようとすると強い抵抗やパニックにつながることもあります。

感覚過敏・感覚鈍麻と食の偏り

次に、感覚的な特性も大きく関係しています。

感覚過敏がある子どもは、匂い・食感・温度・見た目などが苦痛になり、食べられる食品が極端に限られます。逆に感覚鈍麻がある場合には、刺激を求めて濃い味や甘味、脂っこいものを好みやすくなります。結果として、パン、麺、ご飯、ポテト、菓子類など、食感が一定で予測しやすい炭水化物中心の食事になりやすいことが知られています。

生活リズムの乱れと体重増加

また、生活リズムの乱れも体重増加に関係します。

神経発達症の子どもでは、寝つきの悪さ、夜中の覚醒、朝起きられないなどの睡眠障害が少なくありません。睡眠不足は日中の活動量を下げ、疲れやすさや集中困難を強め、食欲の調整にも悪影響を与えます。

加えて、ゲームや動画視聴などへの依存があると座って過ごす時間が増え、夜更かしや朝食を食べない、夕方以降の過食といった悪い循環に陥りやすくなります。切り替えが苦手な特性があるため、「本人の意思でやめる」こと自体が難しいケースも多いのです。

「しつけ」の問題ではない

こうした背景を踏まえると、家族への指導で最も大切なのは「しつけの問題ではない」「親の努力不足ではない」と明確に伝えることです。

強く叱ったり急に厳しい制限をかけたりすると、本人のストレスが増えて食への執着が強まったり、隠れて食べたりすることもあります。

発達を理解したうえでの支援

支援の中心は環境を整えること、ゆっくり時間をかけて焦らずに少しずつ取り組むことです。

具体的には、まず食事や間食についての「環境調整」が必要です。お菓子を目につく場所に置かない、大袋を買わない、間食の時間と量を決める、食べる場所を固定するなど、衝動的に食べにくい仕組みを作ります。

偏食が強い場合には、無理に食べさせるのではなく、食べることを楽しむという経験を積むなかで、保育園や幼稚園で他の子どもがおいしそうに食べるところを見せる、家でも親やきょうだいが楽しく食べているのを見せる、といったことなどによって、自分も食べてみようという気になるのを待ちます。

匂いを嗅いでみる、触ってみる、一口だけでも食べるなどの行動ができた時にほめることも大切です。私の臨床経験では、長い年月の間に食べ物の好みはいずれ変化していきます。

運動については、無理にスポーツをさせるより、散歩や家事などのような簡単な活動を増やす方が継続しやすいこともあります。

投薬を受けている場合には、薬の影響で食欲や体重に変化をきたす場合があるので、主治医とよく相談してください。

神経発達症の子どもの肥満は、本人や家族の努力不足ではなく、特性と環境が絡み合って起こる問題です。理解に基づいた環境調整と小さな成功体験の積み重ねが、長期的には最も効果的な支援になります。

医師プロフィール

さいたま市総合療育センター 小児科

呉 東進 先生

京都大学医学部卒。同小児科助手、米ペンシルベニア大Dep. Neurology研究員、東京女子医大准教授、京都大学大学院医学研究科教授を経て、現在さいたま市総合療育センター、太田メディカルクリニック勤務。日本小児科学会専門医、日本小児神経学会専門医、日本てんかん学会専門医、コンサータ・ビバンセ登録医。日本音楽医療研究会会長。著書に「赤ちゃんは何を聞いているの」など。

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