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子どもの肥満と睡眠:生活リズムが育む「太りにくい脳」の仕組み

子どもの肥満予防の土台となる「生活リズム」

子どもの肥満の原因は食べ過ぎや運動不足にあると思われがちですが、近年、子どもの肥満予防に重要だと注目されているのが「睡眠」と「生活リズム」です。

多くの研究で、睡眠不足の子どもほど肥満になりやすいことが示されています。実は、睡眠は単なる「休息」ではなく、子どもの成長や脳の発達、食欲の調整、心の安定などに深く関わっている大切な「活動」なのです。

現代の生活の問題点、夜の光が「体内時計」を狂わせる

人間の脳には約24時間周期で働く体内時計があり、朝に目覚め、昼に活動し、夜に眠くなるという自然なリズムが作られ、毎日朝に光を浴びることでリセットされています。子どもの肥満予防では、この生活リズムを整えることが基本です。

ところが現代の生活では、このリズムが乱れやすくなっています。夜遅くまでテレビや動画を見たり、スマートフォンやタブレットを使ったりする子どもが増えています。暗い部屋で強い光を長時間夜遅くまで見る、特にスマートフォンなどから出るブルーライトを多く含む光は、眠気を誘うメラトニンというホルモンの分泌を抑制するので、寝つきが悪くなります。

就寝時刻が遅くなると睡眠時間が不足し、翌朝起きるのがつらくなったり起きる時間が遅くなったりします。そうすると、その日の就寝時刻がさらに遅くなります。この悪循環によって、生活全体のリズムが崩れてしまうのです。

睡眠が足りないとどうなる? 子どもの体と脳に起こる変化

睡眠不足は、単に眠いだけではありません。睡眠不足で疲れやすくなると、日中の活動量が減り、運動不足につながることもあります。

加えて、脳にもさまざまな影響を与える可能性があります。子どもの脳は発達の途上で、睡眠中に情報の整理、学習内容の統合、神経回路の最適化などが行われています。こういう脳活動が睡眠不足で妨げられると、注意力や集中力が低下したり、感情のコントロールが難しくなったり、イライラしやすくなったり、意欲が低下したりする場合があります。

さらに注目されているのが、睡眠不足と食欲を調整するホルモンの関係です。睡眠が不足すると、食欲を増やすホルモンであるグレリンの分泌が増え、逆に満腹感に関わるレプチンの分泌が乱れることが知られています。その結果、甘いもの、炭水化物、高脂肪食への欲求が増加すると報告されています。

データで見る日本の子どもの睡眠実態と見直したい環境

現代社会には、子どもの睡眠を妨げる要因がたくさんあります。例えば、塾や習い事で帰宅が遅くなる、親の仕事の都合で夕食や入浴の時間が遅れる、大人自身が夜更かしをしているため子どもも同じ生活リズムになる、などです。特に小さな子どもは家族の生活の影響を強く受けるので、子どもの睡眠を守るためには、家庭全体で生活のリズムを整えることが大切です。

子どもの睡眠時間には個人差がありますが、アメリカ睡眠医学会のコンセンサス声明では、6〜12歳で9〜12時間、13〜18歳で8〜10時間を「健康のために定期的に必要な睡眠時間」と推奨しています。

しかし、日本の子どもの睡眠時間は世界でも最短クラスと言われており、最近の東大や理科研の調査では、平均睡眠時間が小学6年生で約7.9時間、中学3年生で約7.1時間、高校3年生で約6.5時間で、大部分の子どもが推奨睡眠時間よりかなり少ない睡眠時間になっていると報告されています。これはちょっと心配な状況です。

家族で楽しく心地よく! 未来の健康を守る「快眠の習慣」

では、どのように「快眠の習慣」を作ればよいのでしょうか。まず大切なのは、毎日ほぼ同じ時間に起きることです。朝起きたらカーテンを開け、太陽の光を浴びて体内時計をリセットさせてください。休日だけ大幅に朝寝坊をすると体内時計が乱れやすくなるので、お勧めしません。

次に、夜は寝る1〜2時間前からはスマートフォンやタブレット、ゲーム機の使用を減らし、部屋の照明も少し暗めにして入眠モードに入ってください。入浴を就寝の1〜2時間前に済ませると、体温が下がるタイミングで眠気が起こり、入眠しやすくなります。寝室環境も大切です。暑すぎたり寒すぎたりすると眠りが浅くなるので、静かで暗い環境にして快眠できるようにしましょう。

また、寝る前に甘いお菓子やカフェインを含む飲み物を摂らないようにしましょう。子どもたちが充分な睡眠時間と適切な生活リズムを作れるように、周りの大人が気を配ってあげましょう。

医師プロフィール

さいたま市総合療育センター 小児科

呉 東進 先生

京都大学医学部卒。同小児科助手、米ペンシルベニア大Dep. Neurology研究員、東京女子医大准教授、京都大学大学院医学研究科教授を経て、現在さいたま市総合療育センター、太田メディカルクリニック勤務。日本小児科学会専門医、日本小児神経学会専門医、日本てんかん学会専門医、コンサータ・ビバンセ登録医。日本音楽医療研究会会長。著書に「赤ちゃんは何を聞いているの」など。

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