同じように食事を控えたり運動をしたりしていても、以前ほど体重が落ちなくなったと悩む方は少なくありません。しかし、その原因は意志の弱さや努力不足ではなく、体内にある「脂肪細胞」の仕組みが関係している可能性があります。この記事では、「脂肪細胞を減らすことができるのか」という疑問から、太りにくい体を目指すための医学的アプローチまで詳しく解説します。
- 脂肪細胞の種類と特徴
- 医療施術の概要と注意点
- 痩せやすい体の作り方
脂肪細胞とは
脂肪細胞は、脂肪組織を構成する細胞の一つです。脂肪組織は、かつては脂肪をためるだけの組織と考えられていましたが、現在では、エネルギーの調節や代謝に関わる複雑な組織として捉えられています。
脂肪細胞には、いくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴や機能があります。代表的なものとして、「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」が挙げられます。

白色脂肪細胞
白色脂肪細胞は、皮下脂肪や内臓脂肪などを構成する中心的な細胞です。白色脂肪細胞の中には、脂質で満たされた「脂肪滴」があり、この脂肪滴が細胞の大きさに影響します。
白色脂肪細胞はエネルギーを蓄える働きを持つ細胞ですが、単に脂肪を蓄えるだけでなく、体全体のエネルギー調節に関わるさまざまな物質を分泌します。脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンやレプチンなどのホルモン、TNF-αやIL-6などのサイトカインは、全身の代謝やインスリン感受性などの調節に関わるとされています。
褐色脂肪細胞
褐色脂肪細胞は、白色脂肪細胞とは異なる特徴を持つ脂肪細胞です。白色脂肪細胞が主にエネルギーを蓄える細胞であるのに対し、褐色脂肪細胞は、エネルギーを熱として使う方向に関わる細胞とされています。
褐色脂肪細胞には小さな脂肪滴が複数あり、ミトコンドリアが多く、血管や交感神経の分布も豊富です。
これまでの研究では、寒さなどの刺激を受けると、褐色脂肪細胞の中で脂肪の分解が進み、「UCP1」というタンパク質の働きによって、エネルギーが熱として放出されることが示されています。
以前は、褐色脂肪細胞はヒトでは主に新生児期に存在すると考えられていましたが、成人でも鎖骨の上、わき、首、背骨の周囲、腎臓の周囲などに分布することが報告されています。
脂肪細胞を減らすことはできる?
体重が減ると、脂肪細胞そのものが減る(消えていく)イメージを持つかもしれません。しかし、成人期の体重変化は、脂肪細胞の数よりも、主に脂肪細胞の大きさの変化によって起こると考えられています。
ダイエットで脂肪細胞の数は減らない
成人では、脂肪細胞の数は比較的一定に保たれるとされています。減量手術後に体重やBMI、皮下脂肪の体積が減少した場合でも、脂肪細胞の数は変化しなかったとする報告もあります。
脂肪が使われると脂肪細胞は小さくなる
体脂肪の量は、「脂肪細胞に脂質が取り込まれる量」と、「脂肪細胞から脂質が取り除かれる量」のバランスに影響されます。したがって、エネルギーが不足する状況では、脂肪細胞への脂質の取り込みが減る一方で脂質の除去が増えるため、脂肪細胞のサイズは減少します。
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脂肪細胞(皮下脂肪)にアプローチする医療施術の種類
美容医療の領域では、局所の皮下脂肪にアプローチする脂肪吸引などの施術が行われることがあります。ただし、これらは減量(体重減少)を直接の目的としたものではありません。
施術を検討する場合は、使用される薬剤や機器などがどのようなものなのか、その安全性と有効性、リスク(副作用、合併症・後遺症の有無など)、費用について、事前に医師から十分な説明を受けて理解することが大切です。
なお、美容目的の自由診療で用いる薬や材料、機器などは、法律(医薬品医療機器等法)で承認などがされていないケースがあるとして、厚生労働省が注意を呼び掛けています。
脂肪吸引
脂肪吸引は、局所の皮下脂肪除去を目的として行われます。全身麻酔や静脈鎮静が必要な侵襲度の高い施術に分類されます。
脂肪冷却
皮下脂肪を冷却して局所的な脂肪減少を目指す施術です。承認された装置として、クールスカルプティングなどが挙げられます。クールスカルプティングは、部分的に皮下脂肪を冷却し、減少させる装置です。対象となるのは、あご、わきばら、おなか、太ももの内側・外側などの部位です。部分的に皮下脂肪を減少させる効果があるとされますが、体重の減少を意図するものではありません。機器や施術名が似ていても、安全性や有効性の確認状況が同じとは限らないため、承認状況を確認するとともに、無資格者による施術ではなく、医師による適切な施術を受けることが重要です。
脂肪細胞にアプローチする医療施術の注意点
脂肪細胞にアプローチする医療施術は、目的や対象を正しく理解して検討する必要があります。事前に施術内容やリスクについて十分な説明を受け、医学的判断に基づいて行われることが大切です。
全身のダイエットには向かない
脂肪冷却や脂肪吸引などは、基本的に特定の部位を対象にした施術です。体重そのものを減らすことや、肥満症・メタボリックシンドロームへの対策を主な目的にする場合は、生活習慣の見直しを含めた方法を考える必要があります。
ダウンタイムや有害事象が生じる場合がある
施術によって、回復のための時間(ダウンタイム)が必要となることや、有害事象が発生する可能性があることは、あらかじめ認識しておく必要があります。
例えば、クールスカルプティングでは、重大な有害事象として、深部静脈血栓症と逆説的過形成が挙げられています。逆説的過形成とは、施術した部位の脂肪組織が減少せず、逆に硬く肥大して(膨らんで)しまう現象を指します。また、痛みや腫れ、色素沈着、凍傷、しびれ、内出血などが起こる場合があります。
医療施術を検討するときは、期待できる変化だけでなく、施術後の経過や起こりうる有害事象についても確認しておきましょう。
根本から「太りにくく痩せやすい体」を作るには
根本から体重や体脂肪を見直すには、脂肪細胞の数だけに注目するのではなく、脂肪細胞の中にどれだけ脂質が蓄えられているか、日々のエネルギー収支がどうなっているかを考えることが重要です。

生活習慣の改善
肥満やメタボリックシンドロームの予防・改善の基本は、食生活をはじめとする生活習慣の見直しです。まず自分の食生活を振り返り、気になる点を見つけ、無理なく続けられる改善策を取り入れることが重要とされています。
減量に取り組む際は、特定の食品を抜いたり、極端に食事量を減らしたりするのではなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を基本にすることが勧められています。菓子やアルコールなどの嗜好品の摂取を見直すこと、目標を具体的に決めることも、実践しやすさにつながります。
薬による治療
近年、減量の選択肢の一つとして、薬物療法が検討されるようになりつつあります。
ただし、薬は「楽に痩せるための近道」ではありません。肥満症治療薬の対象となるのは、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、医師が治療の対象として適切と判断した患者さんです。患者さんの状況によっては選択できない場合もあるため、まずは肥満症診療に詳しい医師に相談することが大切です。
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まとめ:続けられる体重管理を考える
体重が思うように落ちないと、「自分の意志が弱いから」と感じてしまうことがあります。しかし、成人期の脂肪細胞数は大きく変わりにくく、脂肪細胞のサイズや脂質の出入りが体重変化に関わると考えられています。焦って短期間で変えようとするより、日常の食事や活動量を見直しながら、必要に応じて医療の選択肢も含めて考えることが大切です。
参考資料
- 厚生労働省:「美容医療に関する取扱いについて」「医療の質の向上に関する問題について」「その美容医療、ちょっと待って!」「脂肪/脂質」「肥満・メタボリックシンドローム予防の食事」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA):「クールスカルプティング」「ゼップバウンド」「ウゴービ」
- 日本肥満学会:「肥満症診療ガイドライン2022」
- 米国医学図書館:「Palacios-Marin I et al. Adipose Tissue Dynamics: Cellular and Lipid Turnover in Health and Disease. Nutrients. 2023;15(18):3968.」「Ghesmati Z et al. An update on the secretory functions of brown, white, and beige adipose tissue: Towards therapeutic applications. Rev Endocr Metab Disord. 2024;25(2):279-308.」
監修
伴 良行 先生