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肥満は熱中症のリスクを上げる?予防のポイントを知って夏を乗り切ろう

この記事でわかること
  1. 肥満で熱中症のリスクが上がる理由
  2. 熱中症の予防や応急処置
  3. 肥満症の治療

暑い夏、オフィスへの通勤や少しの外出だけで、大量の汗をかき、息が上がってしまうことはありませんか。30代から40代を迎え、年齢とともに体の丸みが気になり始めたという方々にとって、毎年の日本の猛暑は人一倍、体にこたえる季節かもしれません。ネットやテレビなどで「肥満傾向のある人は熱中症になりやすい」という噂を聞き、毎年の厳しい暑さに対して不安や焦りを感じている方も少なくないでしょう。体重や体型のことが気になると、夏場に外を出歩くこと自体がおっくうになり、周囲の目や自身の体調変化に過度な緊張を強いられることもあるかもしれません。しかし、熱中症になりやすいメカニズムを医学的に正しく理解し、個人の体格に合わせた適切な予防法を身につければ、夏の暑さに対する過度な不安を解消することができます。本記事では、なぜ肥満が熱中症のリスクを高めるのかという理由を解き明かし、日常生活で今日から取り入れられる実践的な予防策を紹介します。さらに、医療の力を借りる「肥満症治療」の最新情報も合わせて解説しますので、健康で快適な夏を迎えるための参考にしてください。

肥満で熱中症のリスクが上がる理由

体格と体温調節機能には、医学的に深い関係があることが知られています。肥満傾向にある体は、標準体型の方と比べて、体内の熱を外に逃がしにくく、また体内で熱を作り出しやすいという構造的な特徴を持っています。ここでは、体脂肪が私たちの体温調節機能にどのような影響を及ぼし、なぜ熱中症を誘発しやすくなるのか、その具体的な3つのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

肥満症で熱中症のリスクが高まる3つの理由
Geminiで生成した画像を元に作成

皮下脂肪が熱の放出を邪魔する

私たちの体は、体温が上昇すると、血管を拡張させて皮膚の表面から外気へと熱を逃がす「放熱」を行います。しかし、皮膚の下に厚い皮下脂肪が蓄積されていると、この皮下脂肪が断熱材のような役割を果たしてしまいます。皮下脂肪は熱を通しにくい性質を持っているため、体の中心部で発生した熱が皮膚の表面まで伝わるのを阻害してしまいます。このように、皮下脂肪が多いと体内に熱がこもりやすくなるのです。

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体内で多くの熱が発生する

私たちが体を動かすとき、筋肉が収縮することでエネルギーを消費し、同時に多くの熱を発生させます。体重が重いということは、それだけ自重を支えて移動させるために、筋肉がより多くの力を必要とすることを意味します。つまり、同じ動作であっても、体重が重い肥満傾向の方は、標準体型の方に比べてエネルギー消費量が多く、それに伴って体内で発生する熱の量も多くなります。オフィスへの通勤などの移動はもちろん、家の中で家事をして動いているだけでも次々と熱が産生されると考えられています。実際、熱中症は炎天下の屋外だけでなく、屋内で過ごしている時に発症するケースが多いことがわかっています。

熱放出のための発汗で脱水リスクが上がる

体温を低下させる手段として、汗をかき、その汗が皮膚から蒸発するときの「気化熱」で体を冷やす仕組みがあります。 肥満傾向の方は、皮下脂肪による断熱効果と産熱量の多さから、体温を下げるために大量の発汗を必要とします。このため、短時間で多くの水分と塩分が体外へ失われ、急激な脱水状態に陥るリスクが高まると考えられています。

熱中症を予防するには

熱中症を防ぐためには、自身の体の特性を自覚した上で、日々の生活習慣や環境を見直すことが重要です。30代〜40代のオフィスワーカーは、一日中冷房が効いた快適なオフィスにいることが多く、一見すると熱中症とは無縁のように思えるかもしれません。しかし、冷房の効いた室内と、強烈な日差しが照りつける屋外との激しい温度差は、体温調節機能を低下させる原因につながる可能性があります。また、暑さに体が慣れていない「暑熱順化(しょねつじゅんか)」の不足も、梅雨明けや急に気温が上がった日に熱中症を引き起こす引き金となることがあります。日頃から体に負担をかけない生活習慣を心がけ、暑さに備える準備を進めましょう。

熱中症を予防するための5つのポイント
Geminiで生成した画像を元に作成

こまめに塩分・水分補給を行う

熱中症予防の鉄則であり、最も基本的かつ効果的な対策が、適切な水分と塩分の補給です。喉の渇きを感じた時点ですでに体内の水分不足が始まっている可能性があるため、渇きを自覚する前に先手を打って補給する習慣が欠かせません。一回に大量の水を飲むのではなく、水分はこまめに補給するようにしましょう。食事以外から1日あたり1.2ℓの水分を飲料として摂取することが目安とされています。激しい運動や野外での活動で大量の汗をかいた場合は、水分と同時に塩分の補給が必要になるため、スポーツドリンクや経口補水液、または塩分の含まれたタブレットや飴などを適度に摂取しましょう。食塩水(目安:水1ℓに1 ~ 2gの食塩)も良いでしょう。なお、飲料の場合、ナトリウム量は100mℓあたり40 ~ 80mgが適当とされています。ただし、糖分の過剰摂取は体重増加につながるため、入浴後やデスクワーク中など大量の汗をかいていない普段の生活では、ノンカフェインの麦茶や水を中心に補給し、食事から適度に塩分をとるバランスが推奨されます。

血管が集中している箇所を冷やす

体温の上昇を感じた際や、外から帰ってきて体が火照っているときは、物理的に体表面から直接冷却することが効果的です。特に、皮膚のすぐ近くを太い血管が通っている部位を冷やすと、冷やされた血液が全身を循環し、体温を効率よく下げることができます。冷やすべき代表的なポイントは、首筋、脇の下(腋窩)、そして左右の太ももの付け根(鼠径部)の3箇所です。オフィスや自宅にいるときは、冷たいペットボトルや保冷剤を薄手のタオルで包み、これらの場所に当てることで、効率的に熱を逃がすことができます。通勤カバンに濡れたミニタオルや冷感シートを忍ばせておき、駅に着いたタイミングなどで首筋を拭うだけでも、体にこもった熱を抑えるのに役立ちます。

我慢せずエアコンを使用する

室内で過ごす際も、決して暑さを我慢せず、冷房器具を適切に使用して快適な環境を維持することが大切です。室内での熱中症は、本人が気づかないうちに穏やかに進行することが多いため、自覚症状を頼りにするのではなく、客観的な数値を指標にしましょう。エアコンを使用する際は、リモコンの「設定温度」を基準にするのではなく、実際の「室温」が28℃以下に保たれているかを温度計で確認することが目安となります。住宅の構造や日当たりによっては、設定温度を28℃にしていても、実際の室温がそれ以上に高くなっている場合があるためです。一方で、室温を下げすぎると(24℃を下回るなど)、外気温との差が大きくなりすぎて部屋を出入りする際に体への負担となるため注意しましょう。また、エアコンの風を部屋全体に循環させるために、扇風機やサーキュレーターを天井に向けて同時に運転させる工夫も良いでしょう。電気代の節約や冷えすぎを心配してエアコンの使用を控えることは避け、適切な温度管理を行いましょう。

外出時は冷感アイテムを活用する

夏の酷暑を乗り切るためには、市販されている多彩な冷感便利グッズを活用することも対策の一つです。 首元に装着して頸動脈を冷やすネッククーラーや、衣服にスプレーして清涼感を得る冷却スプレーなどは、通勤時の快適性を高めてくれる効果が期待されます。

速乾素材のインナーを着用する

身につける肌着の素材を吟味することも、衣服内の湿度を下げ、体温調節をスムーズにするために役立ちます。 綿(コットン)100%のインナーは、肌触りが良く汗をよく吸い取りますが、一度濡れると乾きにくく、水分を保持したまま肌に張り付いてしまうという難点があります。 濡れたインナーが乾かないと、衣服の中に湿気がこもり、皮膚からの汗の蒸発を妨げて放熱が阻害される原因になります。 そのため、夏場はポリエステルなどを使用した「吸汗速乾性」に優れた機能性インナーの着用をお勧めします。 汗を素早く吸収して生地の外側へ放出し、短時間で乾燥させてくれるため、常にサラサラとした肌触りをキープし、気化熱による放熱効果を助けてくれます。

熱中症の症状が出たときの応急処置

どんなに気をつけていても、急な体調の変化や厳しい環境によって、熱中症の初期症状が現れることがあります。自分自身や職場の同僚、家族などが「熱中症かもしれない」と感じたときは、躊躇なく適切な応急処置を開始することが重要です。熱中症の初期の兆候としては、一時的な立ちくらみやめまい、足の筋肉がピクピクと痛みを伴って硬直する「こむら返り」、手足のしびれなどが挙げられます。さらに進行すると、頭痛や吐き気、体が重くて動かないといった倦怠感が現れます。このような症状が見られた場合の応急処置の手順は以下のとおりです。

  1. すぐに直射日光を避け、エアコンの効いた室内や風通しの良い日陰などの涼しい場所へ避難させます。
  2. 衣服の襟元を緩め、ベルトやズボンのホックを外して風通しを良くし(きつい衣服や上着は脱がせ)、体にこもった熱を逃がしやすくします。
  3. 露出した皮膚に水をスプレーしたり、濡れタオルを当ててうちわやファンで仰いだりして、体を冷やします。
  4. 太い血管が通っている首筋、脇の下、太ももの付け根に、冷たいペットボトルや氷を当てて集中的に冷却することも行います。
  5. 意識がはっきりしていて、本人が自力でペットボトルなどを持てる状態であれば、冷たいスポーツドリンクや経口補水液を少しずつ飲ませて水分と塩分を補給します。

ただし、呼びかけに対する返答がおかしい、意識が朦朧としている、けいれんを起こしている、自力で水分が飲めないといった重症のサインが見られる場合は、直ちに119番通報して救急車を要請してください。 救急車が到着するまでの間も、日陰で体を冷やし続ける処置を休まずに継続することが大切です。

肥満症は治療できる!来夏に向けて減量したい方へ

毎年夏が来るたびに、熱中症に対する不安や不快な多汗、息切れに怯える生活を送ることは、心身ともに大きな負担となっているはずです。もし、「健康のために痩せたいけれど、個人の努力や意志だけではどうにもならない」と感じているのであれば、それは「肥満症」という医学的な治療対象の疾患かもしれません。

日本肥満学会の定義において、肥満症とは、BMI(体格指数)が25以上であり、かつ肥満に関連する健康障害(高血圧、脂質異常症など)を1つ以上合併している、または、内臓脂肪型肥満で、医学的に減量を必要とする病態を指します。肥満症は単なる外見的な問題ではなく、医学的な治療の対象となる「病気」です。

医療機関での肥満症治療は、医師や管理栄養士などの専門チームによる科学的な分析に基づき、個人のライフスタイルに合わせた無理のない食事療法や運動療法の指導が行われます。また、適切な食事・運動療法を一定期間継続しても十分な効果が得られない場合など条件を満たした患者さんには、肥満症治療薬も検討されます。肥満外来、糖尿病内科、代謝内科などの受診を検討しましょう。なお、かかりつけ医がいらっしゃる場合は、まずはそちらで相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのもスムーズです。今から一歩を踏み出して体質改善に取り組むことは、熱中症のリスクを下げるだけでなく、生活習慣病の予防や日々のフットワークの軽さにもつながり、来年の夏を今より格段に快適に過ごすための礎となります。

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まとめ

肥満体型の方にとって、夏の熱中症は単なる「暑がり」という一言で片付けられるものではなく、皮下脂肪の断熱作用や産熱量の多さといった明確な医学的根拠に基づいたリスクです。しかし、そのリスクは決して避けられないものではなく、喉が渇く前の水分・塩分の補給や、首筋・脇の下の効率的な冷却、エアコンの積極的な活用、そして吸汗速乾性に優れた衣服の選択などによって、予防につなげることができます。毎年の猛暑に対して必要以上に怯える必要はありません。正しい知識に基づいた日常の工夫を実践しながら、暑い季節を前向きに乗り切っていきましょう。そして、もし根本的な体調や体型の悩みを抱えているのであれば、個人の問題として抱え込まずに、医療機関のサポートを活用する「肥満症治療」という選択肢を思い出してください。

参考資料

監修

守口敬仁会病院 腎臓内科 透析センター長

奥田 英伸 先生

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