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皮膚科診療からみる「肥満」ー肥満と皮膚疾患の関係についてー

はじめに

肥満は単なる「見た目」だけの問題ではなく、さまざまな病気に関連しています。皮膚疾患については、体重増加に伴う物理的な体型の変化や汗が多くなるなどの体質が色々なトラブルの要因になります。また、脂肪細胞から分泌される炎症物質は皮膚の生理機能に影響を与え、さまざまな疾患の発症および増悪因子となります。今回は、肥満と皮膚疾患の関連性について説明し、皮膚科医の視点から体重コントロールの大切さを述べたいと思います。

肥満体型や体質が影響する皮膚疾患

肥満に特有な体型(皮下脂肪が重なりあうことでできる皮膚の重なりや圧迫など)や体質の変化(汗が多くなるなど)によって、色々な皮膚トラブルが生じます。皮膚が重なり合う部分(下腹部、胸の下、足の付け根など)は、汗をかきやすく蒸れやすいため湿度と温度が高くなり、あせもなどの湿疹が生じたり、カビ(真菌)が繁殖しやすい環境になります。

主な症状として、物理的な皮膚同士の摩擦や慢性的な蒸れにより、皮膚のバリア機能が低下し湿疹が生じる「間擦疹(かんさつしん)」があります。歩行や運動によって太ももの内側に繰り返し摩擦が加わることによって、皮膚炎が起きる「股ずれ」が代表的な症状です。

皮膚の湿度と温度が高くなり、カンジダや白癬といった真菌が過剰に増殖し湿疹となる「真菌感染症」もあります。特に高温多湿な夏季に生じやすく、ジクジクとした湿疹が特徴的です。通常の湿疹の治療では治りにくく、抗真菌剤の外用が必要です。また、足白癬(水虫)も生じやすくなります。

腹部や臀部などの皮下脂肪の増加に伴い皮膚の表面が過剰に伸展され、皮膚が割れるような症状が出ることがあります。妊婦さんにみられるいわゆる「肉割れ」と同じ症状です。また、体重の負荷が最もかかりやすい下肢では、過剰な皮下脂肪によって静脈が圧迫されむくみやすくなったり、血流の流れが滞ることで「うっ滞性皮膚炎」が生じます。うっ滞性皮膚炎は、主に下腿(膝から下の部位)に茶色い色素沈着や湿疹が生じ、放っておくと皮膚が硬くなり、潰瘍(深い傷)になってしまうこともあります。

これらの皮膚疾患は肥満が原因で生じるため、皮膚の治療だけでは繰り返し完治せず、慢性的に経過することが多いです。

肥満と関連する皮膚疾患

肥満に関連する代表的な皮膚疾患として、「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」があります。乾癬とは、炎症を起こすタンパク質(サイトカイン)が皮膚を過剰に生成させることで生じる疾患で、過剰に生成された皮膚は分厚くなり、赤くかさかさになります。炎症を起こすサイトカインは、脂肪細胞から分泌されるため、肥満の方に症状が起こりやすいとされています。さらに、乾癬の炎症と肥満に伴う炎症が重なることで、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクがより高まると言われています。また、脇の下、鼠径部、お尻などの部位に慢性的にニキビのような炎症を繰り返す「化膿性汗腺炎」や、首、脇の下などのこすれる部位の皮膚が、黒褐色に変色し硬く厚くなる「黒色表皮腫」も肥満と関連があると考えられています。

「治りにくい」体になっていませんか?

肥満は皮膚の「守る力」を弱めてしまうため、皮膚疾患が治りにくく重症化する可能性があります。皮下脂肪の増大により皮膚が過度に伸展することや、脂肪細胞由来の炎症物質の影響などで皮膚のバリア機能が低下し、乾燥や傷などの外部からの刺激に弱い状態になります。そのため、小さな傷からでも細菌が入り込み皮膚感染症になりやすくなります。また、過度な皮下脂肪による圧迫や血流の悪さから、靴擦れなどの小さな切り傷がなかなか治らず、慢性化しやすくなります。

皮膚治療とともに減量を

肥満に関連する皮膚疾患の治療においては、皮膚の治療とともに適切な体重コントロールが大切です。減量は単なる生活指導ではなく、治療の一環です。 体重を適正化することは、摩擦やうっ滞、皮膚の過度な伸展といった物理的ストレスを取り除くだけでなく、体内の炎症物質を減少させ、皮膚のバリア機能を改善させることで皮膚本来の免疫機能や修復能力を回復させることにつながります。

肥満に関連した皮膚疾患の治療には、皮膚科だけではなく内科やかかりつけ医と連携し、長期的な視点で体重コントロールに取り組みましょう。 肥満に関連する皮膚疾患はデリケートな部位にも出現するため、診察を躊躇される場合もあるかもしれませんが、「肥満」と「皮膚」は切っても切れない関係にあります。私たち皮膚科医もそのような視点を持ち診療を行っています。思い当たる症状がある方は、まず相談から始めてみましょう。

医師プロフィール

岡田 里佳 先生
ここクリニック 院長

岡田 里佳 先生

ここクリニック院長。2008年に名古屋市立大学医学部医学科を卒業後、日本赤十字社医療センターアレルギーリウマチ科、横浜市立大学医学部付属病院皮膚科助教、同大付属市民総合医療センター皮膚科助教等を経て、2020年より現職。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本内科学会認定内科医、日本リウマチ学会認定リウマチ専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。

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