体重のことで悩んでいる方へ、最初にお伝えしたいこと
「体重が減らない」と悩んでいる方へ。あなただけではないのです。一人で悩んでいませんか?
市中病院に長く勤めていたので、高度肥満の患者さんを診ることも多かったのですが、ほとんどの方が体重に関しては「もうあきらめた」と仰っていました。ダイエットを試みても、体重が減らない。体重計の数値を見てがっかりし、嫌気がさしてくる。そのうちに体重計が古くなり、体重を測るのをやめる。近所の人に見られたくないから、昼間に外出するのをやめる。体重を測られたくないから、健康診断を受けるのもやめる。強制的に健康診断を受けさせられても、病院へ行くと医者に叱られそうだから受診しない。
・・・・・ちょっと待ってください。医師はそんなことで叱ったりしませんよ?でも確かに「医者に怒られる」と思っている患者さんは多いようです。昔の先生はそういう怖い先生もいらしたのかもしれません。しかし今は医学も進歩して、肥満が患者さんの「努力不足」だと考える医師はいません。それどころか、涙ぐましい努力をしても「どうにもならなかった」とあきらめてしまう患者さんが多いことを我々は知っています。
さまざまな研究の結果、体重には体質や体の仕組みが関係していることがわかってきました。つまり、体質や体の仕組みによってその人の体重が決まってくる、ということです。その人が生まれながらに持っている体の性質は、いくら努力しても変わるものではありませんし、変える必要もないかもしれないですよね。大事なのは、体重の数値そのものではなく、体の特徴や性質から考えて健康を維持できる体重がいくらか、ということです。
「健康を維持するための体重」を目指すためには、一度に完璧を目指す必要はありません。短期間のダイエットは体に負担をかけ、かえって健康を害する可能性も高いのです。まずは、かかりつけ医と相談し、一緒に現状を整理することから始めましょう。
意志の弱さだけでは説明できない、体の仕組み
動物は食べないと生きていくことができません。動物の生命を維持するために、動物の食欲はホルモンや脳によって調節されているのです。ホルモンとは、体内で産生されて、体の機能を調節する物質です。動物実験により、さまざまなホルモンが食欲に関係していることがわかってきました。これらのホルモンは人体にも存在し、「視床下部」と呼ばれる脳の部分に作用して、食欲を調節しているのです。人間が生きていくためです。同じ脳でも、人間のいわゆる「思考回路」とは別の部分で起こっていることなのです。
摂取したエネルギーが余った分は「内臓脂肪」として一時的に貯蓄し、空腹時や運動時など必要に応じて供給する仕組みになっています。エネルギーの貯蓄が全くないと生命を維持できませんから、ある程度は必要ということも理解できますね。
このようにして、人間など動物の体は生命維持および健康維持のために素晴らしい仕組みができているのです。この仕組みが「破綻」してしまうと「肥満」や「やせ」につながるわけです。「食べ過ぎたから太る」とか、「意志が弱いから太る」というわけではないのです。
体質やホルモン、ストレスも影響している
最近の研究では、肥満には遺伝的要因も大きく関与していることがわかっています。世界のさまざまな人種を比べてみても、確かに遺伝的特徴としてふくよかな体格だったり、身長が高かったり低かったりしますよね。生まれつきの身体的特徴がどうであっても、健康が維持できれば良いわけです。
また、更年期やホルモン変化、ストレス、睡眠不足など、「自分の意志」ではどうにもならない要因が肥満につながることも少なくありません。こうした問題の解決は難しいことが多く、人生に大きな転換期でも起こらない限り根本的な解決はできそうもないことがあります。
何度もリバウンドしてしまうのには理由がある
既に述べたように、人間の生命を維持するためにさまざまな調節機構が働いています。そのため、急激な減量をすると、体は元に戻ろうとします。これがリバウンドです。
正しくダイエットをしないと、筋肉量が減ってしまいます。すると基礎代謝が落ちてしまいますので、必要エネルギー量が少ない体になってしまいます。そのため、以前より少ない食事量のはずなのにリバウンドする、という現象が起こるのです。
ダイエットに失敗すると落ち込みますよね。一度失敗した経験が次の挑戦を難しくしてしまいます。「もうあきらめた」と仰る患者さんたちは、こうやって辛い思いをされてきたんだろうなあと思います。我々医療者がサポートできたら、リバウンドをおこさず健康獲得を目指したダイエットができるのではないかと思います。
最後に:かかりつけ医として心がけていること
我々総合内科専門医は、検査データの数値だけではなく患者さんの体調全体を見ることが重要だと考えています。かかりつけ医として、患者さん一人ひとりの体調について背景を含めて理解し、患者さんと話し合い、小さな変化を連続的にとらえて、患者さんの健康状態を改善・維持するよう心がけています。医師も人間ですし、家族がいて、時には病気もします。よろず相談所のつもりで話してみてください。一人で抱え込まなくて良いですから。
医師プロフィール
原田 裕子 先生
原田内科クリニック院長。1994年に慶応義塾大学医学部を卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。渡米し出産・育児の傍ら、カリフォルニア大学サンディエゴ校附属病院循環器内科で臨床見学研修。帰国後、川崎市立井田病院内科で再研修修了。川崎市立井田病院循環器内科医長、新百合ヶ丘総合病院総合内科部長、大和徳洲会病院総合内科部長、川崎市立井田病院循環器内科担当部長などを経て、2023年より現職。2026年4月より、浅草寺病院副院長に就任。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医。