肥満の改善や予防において、基礎代謝は重要な役割を果たします。基礎代謝が低下すると、同じ食事量でも太りやすくなり、肥満のリスクが高まります。さらに肥満は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスク要因となることが知られています。一方で、基礎代謝を適切に維持・向上させることで、健康的な体重管理が可能になります。
本記事では、基礎代謝が低下する原因と効果的に上げる方法を詳しく解説します。年齢別の基準値で現在の状態を把握し、健康的な体重管理を目指しましょう。
基礎代謝とは?なぜ重要?
1日の総エネルギー消費量のなかで大きな割合を占める
基礎代謝とは、安静時におけるエネルギー消費のことを指します。たとえ1日中動かなかったとしても、「心臓を動かす」「呼吸をする」「体温を一定に保つ」といった生命維持のために、体は常にエネルギーを消費し続けています。
1日の総エネルギー消費量は、大きく3つに分けられます。なかでも「基礎代謝」が大きな割合を占めています。
- 基礎代謝(約60%):生命維持のために消費されるエネルギー。
- 身体活動代謝(約30%):運動、家事、仕事、歩行など、体を動かすことで消費されるエネルギー。
- 食事誘発性熱産生(約10%):食後の消化・吸収の過程で熱として消費されるエネルギー。
肥満を防ぎ、適正体重を維持するために
基礎代謝が高い状態であれば、効率よくエネルギーを消費できるため、太りにくく痩せやすい体質を維持しやすくなります。一方で、基礎代謝が低いとエネルギーが消費されず、体脂肪として蓄積されやすくなります。肥満を防ぎ適正体重を維持するには、運動によるエネルギー消費とともに、基礎代謝量を上げることが重要です。
自分の基礎代謝量を知ろう:年齢別の基準値と計算方法
自身の基礎代謝の状態を把握し、維持・向上させることは適切な体重管理の基本です。ここでは、自分の基礎代謝量の目安の調べ方と、年齢・性別による平均的な基準値について解説します。
自分の基礎代謝量の目安の調べ方
自分の基礎代謝量の目安は、以下の式を使って計算することができます。
基礎代謝量の計算式:基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×体重(kg)
基礎代謝基準値とは、体重1kgあたりの基礎代謝量の代表値のことです。年齢・性別によって異なります。
| 年齢(歳) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 1~2 | 61.0 | 59.7 |
| 3~5 | 54.8 | 52.2 |
| 6~7 | 44.3 | 41.9 |
| 8~9 | 40.8 | 38.3 |
| 10~11 | 37.4 | 34.8 |
| 12~14 | 31.0 | 29.6 |
| 15~17 | 27.0 | 25.3 |
| 18~29 | 23.7 | 22.1 |
| 30~49 | 22.5 | 21.9 |
| 50~64 | 21.8 | 20.7 |
| 64~74 | 21.6 | 20.7 |
| 75以上 | 21.5 | 20.7 |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
たとえば、40歳・体重70kgの男性であれば、基準値「22.5」を使い「22.5×70=1,575」となり、目安は1日あたり1,575kcalです。
同様に、40歳・体重55kgの女性なら、基準値「21.9」で「21.9×55=1,204.5」となり、目安は約1,205kcalとなります
年齢によって基礎代謝は異なる
基礎代謝は年齢とともに変化します。基礎代謝量がもっとも高くなる時期は、成長期から青年期にかけてです。この時期は新しい組織を作るために大量のエネルギーを必要とするため、多くの食事を摂っても太りにくい傾向にあります。しかし、成人を過ぎてからは基礎代謝量は徐々に減少していきます。これは、加齢によって筋肉量が減少することや、各臓器の代謝の低下、身体活動量の低下などが重なるためです。年を重ねるにつれて「昔と同じ食事量なのに体重が増える」と感じるようになるのは、この基礎代謝の低下が大きく関係しています。
さらに、基礎代謝には個人差があり、筋肉量や体格のほか、平均体温やホルモンの状態などによっても変動します。
基礎代謝が下がる原因と健康への影響
基礎代謝は加齢で低下する以外にも、さまざまな要因で低下します。その多くは日々の生活が関係しています。
原因① 生活習慣の乱れ
現代の生活習慣には、基礎代謝を低下させる要因が多くあります。まず気をつけたいのは運動不足です。筋肉を使わない生活が続くと、筋肉が衰えて基礎代謝が低下します。また、睡眠不足はホルモン分泌や自律神経機能に大きな影響を及ぼし、代謝機能の低下につながることが知られています。強いストレスは睡眠の質を低下させ、ホルモンバランスを乱すことで、食欲増進や血糖値の上昇など、肥満のリスクを高める要因となります。
原因② 食事制限と栄養不足
ダイエット目的で必要以上に食事を制限することは、基礎代謝を下げる要因となります。極端な食事制限が続くと、筋肉の材料となるタンパク質や代謝をサポートするビタミンやミネラルが不足し、筋肉が衰えることで基礎代謝が下がります。さらに体はエネルギー消費を抑えようとする適応反応が起こることが知られています。同じ食事量でも痩せるどころか逆に太りやすくなります。健康を維持しながら基礎代謝をキープするためには、最低限必要なエネルギーは必ず確保し、バランスの取れた栄養摂取を心がけることが大切です。
基礎代謝が下がるとどうなる?
基礎代謝の低下は、太りやすくなるだけではなく、全身の健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。基礎代謝が低下することで太りやすくなり、その結果として肥満になった場合、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスク要因となることが知られています。また、基礎代謝の低下の主な要因である筋肉量の減少は、活動量の低下や疲れやすさなど、日常生活に影響を与える場合があります。
基礎代謝を上げる方法
基礎代謝量を上げれば、安静にしていても消費されるエネルギー量が増加するため、健康的な体重を維持しやすくなります。基礎代謝は体組成(筋肉量)や自律神経の状態に左右されるため、運動、栄養摂取、規則正しい生活を組み合わせることが大切です。
筋トレ・有酸素運動
基礎代謝の向上のためには、筋トレ(レジスタンストレーニング)と有酸素運動を組み合わせることが効果的です。
- 筋トレ:スクワットや腕立て伏せなど、筋肉に負荷をかける運動です。特にお尻や太ももといった下半身には大きな筋肉が集中しているため、スクワットを取り入れると効率よく筋肉量を増やすことができ、基礎代謝の向上につながります。
- 有酸素運動:ウォーキングや水泳など、酸素を取り入れながら行う運動です。直接的な筋肉増量効果は筋トレに比べると低いものの、心肺機能を高め、全身の血流を改善することで代謝全体の向上をサポートします。
運動は一度に過度な負荷をかけるよりも、無理のない範囲で継続することが大切です。また、運動後は栄養補給や休息を適切に行い、体をしっかり回復させるようにしましょう。
食事の改善
日々の食事内容を見直すことも欠かせません。以下を意識しましょう。
- タンパク質を意識する:肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質は、基礎代謝量を左右する筋肉を維持・増量するための不可欠な材料となります。最低でも1.0g/体重1kg(体重60kgであれば60g)以上は摂取するようにしましょう。また3食の食事で均等に摂取する(1食あたり20g以上)ようにしましょう。
- 1日3食食べる:規則正しい食事は自律神経を整え、内臓の活動を活性化させます。特に朝食を含む規則正しい食事は、体内リズムを整えることに役立ちます。
生活習慣の見直し
生活習慣を改善し、基礎代謝が下がる要因を減らしていくことも大切です。
- 良質な睡眠を確保する:質の良い睡眠は自律神経を整え、さまざまなホルモンの正常な分泌をサポートします。
- 日常生活での活動量を増やす:座りっぱなしの時間を減らし、家事や階段の利用など日常的な身体活動(非運動性身体活動)を増やすことで、総エネルギー消費量を向上させることができます。これは肥満予防の重要なポイントとして注目されています。
- ストレスを溜めない:強いストレスは睡眠の質を低下させ、ホルモンバランスを乱すことで、食欲増進や血糖値の上昇など、肥満のリスクを高める要因となります。リラックスする時間を持つことが大切です。
まずは今日からできること、続けられることから少しずつ取り組んでみましょう。
参考資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」「加齢とエネルギー代謝」「レジスタンス運動」「睡眠と生活習慣病との深い関係」
監修
奥田 英伸 先生